JAL「ボーイング737MAXちょっとだけ導入」の意味 全然足らない737-800後継 考えられる選択肢は
まだまだ残る「JALの新たなエアバス機導入」の選択肢
一方で、JALの737-800の後継機には、明確なライバルも存在します。
このクラスにおいて世界中でもっとも売れているのは、エアバスA320シリーズ。JALグループのLCC(格安航空会社)であるジェットスター・ジャパンでも、この機が使用されています。
しかし、JALは1965年に727を導入して以来、日本でボーイングの牙城を担ってきました。今回737-8が選ばれたのは、737-800との親和性はもちろん、ボーイングがJALへのサービス態勢を熟知しており、JALは引き続きその態勢を受けられるからこそといえるかもしれません。
一方、JALは2019年に初めて新造エアバス製旅客機である「A350」を導入。これは大きな話題になりました。もちろんエアバスもA350をきっかけに小型機クラスも受注を狙ったでしょうが、今回は期待通りにならなかったようです。ただし、JALの今後の更新予定機種を眺めると、必ずしも737MAXが有利とまでは言い切れないでしょう。
また、JALは737-800より大型の旅客機である767-300ERを、2022年3月段階で29機使用しています。767自体は1985年の導入ゆえに、後継機の選定も視野に入っているでしょう。737-800の後継機は、この767-300ERの状況も絡んでくる可能性があります。
767-300ERの航続距離は最大1万460km。200席クラスの客室をもち、国際・国内で使える汎用性が特徴です。仮にJALが767の更新も視野に入れて、残りの737-800の後継を含めた機材構成の入れ替えを検討する場合、航続距離が6110kmの737-10に対してA320ファミリーで最も遠くに飛べるA321XLRは8700kmのため、エアバスが有利になります。
また、エアバスは大小問わず操縦室の仕様を早くから共通化させ、乗員が最低限の訓練でそのまま移行できることをセールスポイントとして挙げており、実際にふたつの機種を同時期に同じパイロットが操縦する取り組みもあります。これはJALが保有するA350と、A320のケースでも同様です。長い目で見れば、エアバス機をそろえれば乗員のリソースを節約する効果は考えられるでしょう。
JALは21機の737-8に続く新型機の選定をいつ決めるか、旅客需要の予測と路線網をどの程度の便数でどこに張るか、最適なのはどの機種かを綿密に計算しているでしょう。JALにとって長年のパートナーだったボーイングが勝つか、一方で近年の同社の機材構成に大きな影響を与えたエアバスが巻き返すか、注目したいところです。
【了】
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
コメント