海自艦にもSPY-6来る? レイセオン・テクノロジーズが米海軍から取り付けた契約の意味
日本も他人事ではない理由とは
それでは、このバックフィット改修がなぜ日本にとっても他人事ではないのでしょうか。
それは、日本の海上自衛隊が運用するイージス艦も、このバックフィット改修が可能と見られているためです。現在、海上自衛隊は8隻のイージス艦を運用しており、その中でも、2020年3月に1番艦「まや」が就役した2隻のまや型護衛艦に関しては、その船体規模なども踏まえてSPY-6の搭載が可能と見られています。
すでに触れたとおりSPY-6は、現在まや型に搭載されているSPY-1レーダーと比べて大幅に探知距離が向上しており、このことは、同艦に搭載される弾道ミサイル防衛用の迎撃ミサイルである「SM-3ブロック2A」の射程や機能を、これまで以上に活かすことができるようになることも意味します。
さらに今後、アメリカ海軍はSPY-6を、イージス艦を含めた多くの戦闘艦艇に搭載することを計画しています。いずれ、神奈川県のアメリカ海軍横須賀基地にも、SPY-6を搭載した艦艇が配備されることになるでしょう。その際、日米間で共通のレーダーを使用することは、有事の際の連携や補給面でのメリットも大きいと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。
今後SPY-6は独自の能力向上が予定されていて、たとえばSPY-6同士で目標に関する情報を共有し、どこにどのような敵が飛んでいるのかということを示す、ひとつの大きな状況図(ピクチャー)を作成することも可能になると見られています。2022年12月に公表されたいわゆる「安保関連三文書」では、海上自衛隊のイージス艦をさらに2隻、増勢することも明らかにされました。バックフィット改修の可能性とあわせて、新しいイージス艦用のレーダーに関しても、SPY-6は有力な候補となり得るでしょう。
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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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