「えっ、シースピカ!?」 G7サミット首脳陣を乗せた“船”の正体 予想外のサプライズ移動に選ばれたワケ
なぜ“サミットお召船”に?
従来、瀬戸内海汽船は広島から宮島や江田島、四国の松山などを結ぶ生活航路を中心に運航していましたが、「シースピカ」は観光に特化した「瀬戸内しまたびライン」と呼ばれる航路に就航しています。通常時は広島港と三原港との間をさまざまな島に寄港しながら約半日かけて航行しており、大久野島などでは短い時間ですが上陸して観光することもできます。
「シースピカ」の特徴として、速力22ノット(約41km/h)という高速性能と、双胴の船型を生かした良好な居住性の両方を兼ね備えていることがあげられます。
例えば8時30分に広島港を出発する東向きコースではグランドプリンスホテル広島(宇品島)と呉港でも乗船客を乗せた後、下蒲刈島と大久野島で下船観光を行い、瀬戸田港(生口島)を経由して三原港へ13時5分に到着します。海上自衛隊呉基地の艦船や音戸の瀬戸などの船上見学も組み込まれており、そうしたスポットを予定通りにきちんと巡り、観光を楽しんでもらいたいからこそ、速力が要求されたのです。
そして今回、G7サミットに参加した首脳が集った2階の「スピカテラス」もセールスポイントの一つ。左右と後方に大きく開いた開放的なデッキは、全ての方向に眺望が確保されており、瀬戸内の海や島々を存分に堪能することができます。
ところで「シースピカ」はG7サミットでの使用に当たって船内を改装しています。岸田首相も使用した客室後方2名掛けシートは白からネイビーのシートになっており、その前に置かれていたシートもソファ席へと変わっています。
イチバンセンの川西氏はシースピカが使用されたことについて「グランドプリンスホテル広島と宮島、いずれも接岸の経験実績があるのと、高速性能や定員の規模が良かったのだと思います。2階テラスに皆さん乗船されていたようで、会議の疲れを癒やして頂けていれば幸いです」と話します。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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