もがみ型護衛艦は売れるの? 「くまの」初の海外遠征でセールス “アタマだけ”でも輸出なるか

インドネシアに売り込んできました!

 30FFMを開発した三井E&S造船を買収し、もがみ型の建造を行っている三菱重工業は、日本の防衛・セキュリティ装備展示会「DSEI JAPAN」などで30FFMの模型展示などを行っているほか、防衛装備品の輸出を司る防衛装備庁も、2022年 12月にベトナムの首都ハノイで開催された防衛装備展示会「ベトナム国際ディフェンスエクスポ」で30FFMのプロモーション映像を放映したり、ペーパークラフトを配布したりしてきました。

 それを経て、IMDEX Asia 2023とランカウイ国際海洋航空宇宙装備品展示会への「くまの」の参加と一般公開は、セールスプロモーションにおいても大きなインパクトがあったものと思われます。

「くまの」は5月9日から11日まで、インドネシア、北ジャカルタのタンジュンプリオク港に寄港。この際、艦長の櫻井敦2等海佐は横須賀基地への帰還行事で、もがみ型(30FFM)の優れた先進性・技術力・省人化対応について紹介できたと総括しています。セールスのメインターゲットのひとつと目されているインドネシアに寄港し、同国海軍の要人などにアピールできた事は、30FFMのセールスだけでなく、日本とインドネシアの防衛協力の強化という側面でも、大いにプラスになったと筆者は思います。

 ただ、護衛艦として30FFMをまるごと輸出することにはハードルもあり、日本政府としては当面、考えていないようです。2022年10月15日付の共同通信は政府関係者の話として、30FFMそのものではなく、“ユニコーン”をインドへ輸出する方向で調整を進めていると報じています。

輸出のハードルも下がる“ユニコーンだけ”の輸出

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日インドネシア親善訓練の様子(画像:海上自衛隊)。

 もがみ型と30FFMはステルス性能を重視しており、海上自衛隊の護衛艦として初めて、ステルス性能を高める形状のマストを採用しています。このマストはその形状から、「ユニコーン」(一角獣)と呼ばれています。

 現在の防衛装備移転三原則では、救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型の防衛装備品に輸出を限定しているため、護衛艦をまるごと輸出するには三原則の見直しが必要となりますが、ユニコーンは警戒と監視に用いる防衛装備品のため、政府は現行の三原則でも輸出が可能であると見て、インドへの輸出を進めているものと思われます。

 日本は水上戦闘艦を輸出した経験が無いため、欧米諸国やロシアなどに比べて競争力では見劣りがします。また、防衛装備移転三原則の制約もあって、30FFMそのものの輸出の成功は未知数です。しかし、技術的に競争力があり、法的な制約も小さく済むユニコーンのような新技術の輸出は、より現実的なのではないかと筆者は思います。

【了】

【え…艦体よりデカい】海外の展示会でアピールしていた「もがみ型のアタマだけ」(写真)

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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