動きだすか京阪中之島線「九条延伸」構想 凍結された夢洲アクセス 地下鉄乗換でIR需要を取り込める?
京阪グループが中之島線の延伸について検討を始めました。万博後に夢洲で計画されているIRの需要を取り込む狙いですが、これまで延伸計画は幾度となく浮上してきました。利用が低迷する中之島線の起爆剤にできるのでしょうか。
「京阪のひとり相撲」にならないかがカギ?
課題は、建設費です。2kmの新線整備にかかる事業費は1000億円。新桜島延伸より安く済みますが、キロあたりで考えると他の地下新線より割高です。
そこで気になるのが、IRの推進役でもある大阪市と大阪府の意向です。市と府は、京阪とともに中之島高速鉄道の主要株主です。九条駅への延伸線建設が決定したなら、同社を使って上下分離の枠組みで整備するのでしょう。
中之島線延伸構想について、これまで京阪HDは熱心にメディア向けのアピールを繰り返してきました。ただ、大阪市議会で中之島線延伸が話題になったことはほとんどありません。
市と府は2014年から北大阪急行延伸線など鉄道新線の検討を始めて、3路線の整備に着手しましたが、中之島新線は対象から外れました。大阪の有権者としても地方議員としても、「夢洲と京都を結ぶ役割があります」と言われても、正直、関心を持ちにくいのでしょう。ゆえに、京阪HD以外ではあまり盛り上がらないのです。
京阪HD会長は産経新聞のインタビューで、新線は上下分離方式、かつ補助金も必要で、「府・市とは(延伸で)行く話を、具体的に進めている」と発言しています。事前の調整は済んでいるのでしょうか。
長年、利用が伸び悩んだ「未完の大器」京阪中之島線。九条駅延伸で新たな需要を創出できるのか。IRへの輸送需要が本当に期待できる量があるのか。精査が必要でしょう。
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Writer: 森口誠之(鉄道ライター)
早稲田大学卒業後、出版社編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。国内外の自動車や道路、公共交通などを取材し各種メディアや講演で発表。近年は自動運転、MaaS、スモールモビリティに注力。モビリティやまちづくりのリサーチ・コンサルティングを担当する株式会社モビリシティ代表取締役も務める。著書に『パリ流環境社会への挑戦』(鹿島出版会)、『MaaSで地方が変わる』(学芸出版社)など。
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