北海道・四国はボロボロ…国鉄なぜ「6つに分割」された? "葛西プラン"と驚異の「13分割」案

北海道の鉄道を救うはずだった「葛西プラン」とは

 ではこれをもっとうまく支えることはできなかったのでしょうか。分割民営化の旗手とされる葛西は後に、改革は国会審議を意識した様々な妥協が織り込まれた「未完のものである」と述べています。

 というのも結局実現することはなかったものの、本来は「JR北海道は輸送密度が少ないから、当然、一人当たりの輸送コストは高くなる。したがって、運賃は高くすべきだ。住宅費や食費も含めた生活費は地価や物価を反映して、東京よりもずっと低い。したがって、賃金は地場の水準並みに下げるべきだ。極端に輸送密度の少ない路線は果断に廃止して、自動車輸送に委ねるべきだ」というのです。

 実際にはその代わりに「国鉄債務負担を免除した上に総額1.3兆円の経営安定基金を与え、その運用益で赤字を埋める」という現行の仕組みとしたのですが、金利低下で赤字を埋めきれなくなり、運賃値上げ、赤字路線廃止が進んでいます。重要なのは、どちらの道を選んだところでJR北海道とJR四国は同じ現実に直面したということです。

 とはいっても、2018年度にJR上場4社は計1.1兆円以上の経常利益を計上しているのに対し、JR四国とJR北海道の営業赤字は計540億円、経営安定基金を加味した経常損失は114億円にものぼっています。もっと効果的な地域を越えた内部補助の仕組みを作ることはできなかったのかと考えさせられます。

 1981年臨調の答申には「分割・民営化に当たっては、分割後の各会社が経営努力をし、創意工夫をすれば、採算性を回復し、自立できるという目途と自信を持ちうるように配慮する必要がある」とありますが、これを実現できる分割方法だったのか、今だからこそ考え直す必要があるのではないでしょうか。

【了】

【画像】実現してたかも!? 驚異の「国鉄13分割案」どんな分け方だった?

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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