鼻先どうした!? コックピット2段構え 異形すぎる米空軍機の「任務」とは
飛行機の鼻先、コックピットの前方に、もうひとつコックピットが張り付いたような飛行機をアメリカ空軍が使っていたことがあります。あまりに特異な形状の飛行機、なんのために作られたのでしょうか。
見た目とは裏腹に担った役割は重大
一般的に飛行機のコックピット(操縦室)はひとつです。軍用機のなかには爆撃機などのように、操縦席のさらに前方に航空士(ナビゲーター)席があるものも存在しますが、アメリカ空軍にはなんと、飛行機の鼻先すなわち機首に、もうひとつコックピットが設けられているという、奇妙な機体がありました。
その名は「NC-131H」。一見すると“珍機”という言葉がピッタリの機体ですが、同機はその外観とは裏腹に、ステルス戦闘機や大型輸送機、戦略爆撃機、果てはスペースシャトルの開発にまで大きく関わる重要な任務を帯びた機体でした。
そもそも、2023年の現在でこそ航空機のかなりの部分はコンピューター・シミュレーションで再現できるようになっており、それこそフライトシミュレーターでは、世界各国の様々な航空機の挙動を実機さながらに行うことが可能になっています。
しかし、今日ほどコンピューターが発達していなかった時代には、実機を飛ばしその都度、記録を取るしかありませんでした。とはいえ、実機を作るのには相応のコストがかかるため、数多くのプロトタイプ(試作機)を作ればその分だけコストも膨らみます。湯水のようにお金が使えるプロジェクトばかりではないため、状況によってはなるべく実機(プロトタイプ)を造らずに済ませたいのは、皆思うことでしょう。
その点、もし1機で様々な飛行試験を行える機体があれば、非常に効率化できます。航空技術者にとっては夢のような機体、それがNC-131Hだったといえるでしょう。
NC-131Hは、本格的なプロトタイプを製作する前に、航空機がどのような挙動を示すか、どのような操縦特性を見せるかを研究するために作られました。
用いられたのは、コンベア社製のC-131「サマリタン」輸送機でした。同機は民間機として開発されたコンベア「CV240」レシプロ双発旅客機を軍用機として転用したもので、高級将校を始めとしたVIP(要人)や戦傷者の空輸などに用いられていました。
そのうちの1機をベースに、アメリカ空軍の飛行力学研究所(AFFDL)が所要の改造を施す形で1960年代後半に製作したのがNC-131Hでした。なおエンジンは、原型のC-131(CV240)よりも強力な4368馬力のアリソン製ターボプロップ・エンジン「T56」に換装されています。
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