世界遺産"取り消し"目前!?「富士山登山鉄道」が問題解決の救世主であるワケ 山梨県の大逆転妙案とは

で、「富士山登山鉄道」がどう解決してくれるのか

 すぐそこに迫りくる危機、それを打破するものとして構想されたのが「富士山登山鉄道」です。ではそれがどう解決につながるのでしょうか。

 まず環境負荷という面では、山梨県側ルートから自動車を完全排除することとなります。さらに、道路を転用することで山に「新ルート」として大きく手を加える必要がありません。実務上では、用地買収もほぼ不要というメリットもあります。構想段階では「架線を使用せず、地面から車両へ給電する」仕組みをとることで、景観にも配慮でき、さらに感電の心配なく緊急車両を通せます。

 人の多さという面では、列車の定員×運行本数で受け入れ人数を完全にコントロールすることで、「無秩序に人がどんどん入山する」ことを防ぐ目論見があります。

 そのまま開業すれば、駅に登山客が殺到して「いつになるか分からない乗車順」を待つ大行列ができるのは目に見えています。そこで「完全予約制」を採用して、乗車予定の客以外は駅に来ない形になるのではないか、と県は話します。さらに時間帯で運賃を変動させて混雑分散を図り、運賃を高額化させて付加価値を高める狙いもあります。

 このやり方は「富士山を遠い存在にしてしまう」「身近に行けるのが良かったのに」という声を生みます。それに対し長崎知事は「そもそも富士山は身近ではなく、遠い存在です。しっかり計画を練って休暇を取り、仲間とともに一大イベントとして登るものだと思います。それならば、多少高いお金を払ってでも、『行けてよかった、一生の思い出になった』と言える美しい富士山がそこにあったほうがいいのではないか」と話します。

 鉄道会社のあいだでも、車両基地の公開や現場体験など、イベントは長らく無料が当たり前でした。しかし近年、増加するファンが殺到して現場が大混乱に陥るなど問題が深刻化したため、今ではまとまった参加料を徴収する「有料イベント」となるのが一般的になりました。同じことが、富士山訪問でも起きつつあるというわけです。

【画像】えっ…!これが「富士山登山鉄道」LRTのルートと概要です

テーマ特集「【鉄道計画特集】新路線 新駅 連続立体交差事業 次に開業するのはどこ? 過去にあった「幻の新線計画」は?」へ

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. 世界遺産検定1級保持者です。大切な問題をとりあげていただきありがとうございます。私も今年富士山に途中まで登りましたがオーバーツーリズム問題は深刻と考えます。
    ただ本記事のタイトルの「世界遺産"取り消し"目前!?」は、あたかも危機遺産リストに加わったかのような誤解が生じるのではないかと懸念しております。危機遺産リストへの追加の裏には「顕著な普遍的価値を損なうような重大な危機にさらされている」と認定される非常に重い決断がありますので、その線引は重要です。ヴェネツィアを例に出して「対岸の火事ではない」とされる展開は、無理筋とは申しませんが、かなりの隔たりがあると感じます。また「危機遺産リストへの追加」は取り消しを目的としているものではなく、あくまで「遺産の価値を守るために財政的支援などの対策を行う」ことを目的としているものです。その点からもタイトルについて再考の余地があるのではないかと考えます。