「え、戦車じゃないの!?」魔改造&擬装がすぎるイスラエル異形の兵器 長らく極秘だったワケ

主砲がダミーだと!?

 ペレフは一見すると普通の戦車のようで、とても自走式ミサイルランチャーには見えません。主砲も備えているように見えますが、これはただの鉄パイプ。擬装用のダミーです。

 擬装の意図は戦車部隊に紛れ込ませ、スパイク-NLOSの長射程を生かした奇襲的な長距離打撃を加えることにあります。写真も公開しない徹底ぶりを見せたのは、奇襲効果を最大化するためだったといえるでしょう。第2次レバノン戦争時に報道写真で公開されてしまったのは、検閲官のミスだったようです。

 イスラエルは、1973(昭和48)年の第4次中東戦争で自軍の戦車部隊が対戦車ミサイルによって大きな損害を出したことや、その後の実戦経験から、シリアやエジプトの機甲部隊を効果的に攻撃する対戦車ミサイルの活用を模索していました。イスラエル陸軍はペレフを戦車部隊に同行させることで、先述の奇襲攻撃に加え、後方の目標を精密攻撃する砲兵的な使い方も考えていたようです。

Large 231011 pereh 03

拡大画像

ミサイル発射態勢をとるペレフの小隊。上下に6基ずつ12基のランチャーが分る。シルエットはかなり大きい(画像:イスラエル国防省)。

 スパイク-NLOSは、放物線を描く弾道を取るため近距離攻撃には向きませんが、砲塔前部には戦車のようなくさび型の、また追加装甲や側面にはサイドスカートを装備しており、戦車並みの防御力を持ちます。また副武装として7.62mmFN MAG機関銃を2挺装備します。

 ペレフの生産台数は400~700両といわれています。2017(平成29)年に退役しましたが、スパイク-NLOSは強力なミサイルでありモスボール保管されている可能性もあります。今回の戦争でも、これまで知られていなかった魔改造兵器、秘密兵器が姿を現すかもしれません。イスラエルは常に「備え、力を蓄え」なければならないのです。

【了】

【え、そこから、しかもミサイル!?】発射する「ペレフ」(写真)

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。