自衛隊「大砲ドーン!」はごく一部? 見えない目標に砲弾の雨を―知られざる“裏方”たちの奔走

命中精度高めるために必須の気象観測

 しかし、戦砲隊からは目標が見えません。そこで登場するのが前進観測班です。前進観測班は、目標が見える地域まで車両や徒歩、場合によってはヘリコプターなどを使用して移動し、目標が見える高い場所に拠点を作ります。この時に作る拠点は最低でも2箇所。多ければ多いだけ多角的に砲弾の着弾を観測できるため、4箇所や5箇所ほど設ける場合もあるそうです。

 ちなみに、前進観測班の観測能力を補完するのが、ドローンです。観測班は目標地域から近い場所にいるため、そこからドローンを飛ばせば、より高い場所から観測でき、砲弾の精度もより向上するといいます。

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東北方面特科連隊の砲班。写っているのは一部の隊員で、砲1門につき概ね5~8名の隊員が就く(武若雅哉撮影)。

 目標が見え、戦砲隊も準備が整いました。しかし、これだけではまだ射撃をすることはできません。次に紹介する気象班によって収集された気象データも必要になるのです。

 気象班は、トラックに乗った可搬式の気象観測装置を使って、文字通り気象観測を行います。野戦特科部隊の気象班が収集するデータは、砲弾が飛翔する予定のコース上の天気です。撃ちだされた砲弾は、推進装置を持っていないため、放物線を描いて飛翔したのち落下します。

 その間に受ける風向きや風向、気温、湿度などの空気の密度も観測し、目標にきちんと降り注ぐよう精度を高める一助を行います。ちなみに、より長距離の射撃を行うには地球の自転も計算に入れるとか。それらのデータは射撃指揮班に送られ、活用されます。

【え、風船上げるの?】これが155mmりゅう弾砲FH70を射撃するための動きです(写真)

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