「連結器を全部取り替えろ!」日本の鉄道車両6万両の一斉交換なぜ行われた? 旧式を使い続ける欧州との違い
大正時代、日本で鉄道車両を繋ぐ連結器の一斉交換を行ったことがあります。国はどのような理由から、このような一大プロジェクトを行ったのでしょうか。一方、欧州では日本から消えた「ねじ式連結器」が現役です。
事故が多かった「ねじ式連結器」
鉄道車両を相互に繋ぐのが連結器です。日本では1925(大正14)年、それまでの「ねじ式連結器」から「自動連結器」へ、ある日一斉に交換するという一大プロジェクトが実施されました。この一斉交換、どういった理由で行われたのでしょうか。
そもそも、ねじ式連結器には、ねじで長さを調節できる鎖状の金具と、それをかけるフックが車両端部の中央にあり、左右にはバッファ(緩衝器)という部品が設けられています。鉄道発祥の国イギリスで古くから採用されている連結器で、イギリスの鉄道システムを基本にした日本でも、開業当初から広く使用されていました。現在は、愛知県にある「博物館明治村」で運行しているSL列車などで見ることができます。
連結時は車両同士のバッファを押し当てる形で停車させ、連結面にもぐり込んだ係員が金具をフックに掛け渡したのち、バッファが密着するように長さをねじで調節します。引っ張る力を鎖状の金具とフックが、そして押す力をバッファが伝えるような仕組みになっています。
ただ、最大の欠点は連結に手間がかかることです。ゆえに、連結の時間を短縮する目的で、本来なら車両の横で待機しなければいけないところ、係員があらかじめ連結面で金具を持って待つ、という「裏技」が横行したとか。
これも、レールの幅が1435mmあり車両の幅も広いイギリスの場合は、フックとバッファの間隔が左右それぞれ40cm以上あるのでまだ良いのですが、狭い1067mmのレール幅を採用した日本では人の入れる隙間が小さくなり、バッファに挟まれて係員が死亡する事故がたびたび発生したそうです。
また、連結器の強度が低かったことにより、列車の両数を増やすにも限界がありました。このため、より安全で強度の高い連結器に交換する計画が持ち上がり、アメリカで開発されて、アメリカの鉄道システムを導入した北海道で先に普及していた自動連結器を本州以南でも大々的に採用することになりました。
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