南極観測船「しらせ」は人名? 実は自衛艦の命名規則の“ご法度” いったい何に由来するのか

南極観測船「しらせ」は海上自衛隊所属の砕氷艦で、艦名は南極探検を行った白瀬中尉にちなんでいます。しかしこれは異例のこと、海上自衛隊は人名を艦名に採用しないしきたりなのです。

旧海軍からの伝統で人名はNG!

 12月14日は、今から110年以上前の1911年にノルウェーの探検家ロアール・アムンセンと3人の隊員が、世界ではじめて南極点に達したということで「南極の日」とも呼ばれます。日本では65回目となる南極への隊員派遣として、南極観測船「しらせ」が2023年11月10日に横須賀から出港、12月末に到着する予定です。

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砕氷艦「しらせ」(画像:海上自衛隊)。

 この「しらせ」は海上自衛隊により運用されています。文部科学省では「南極観測船」と表記されており一般的にもこの名称を使うことが多いですが、海上自衛隊や防衛省では「砕氷艦」と表記します。

 ただ、海上自衛隊の艦としては、ひとつ疑問が沸きます、なぜ「しらせ」という艦名なのかです。

 南極で「しらせ」といえば、アムンセンなどと同時期に南極探検を行った白瀬 矗(しらせ のぶ)中尉にちなんでいると思われます。しかし、実は自衛隊では艦艇の命名基準に人名が定められておらず、原則として、艦名に人の名前は使えません。これは旧海軍時代からの伝統ともいえます。では、「しらせ」は何に由来するのでしょうか。

「しらせ」という艦名は、1982年11月に就役し2008年7月に退役した先代の「しらせ(以下:初代しらせ)」から継承されている艦名です。

「初代しらせ」の艦名は、南極観測用に砕氷艦を新造する際に、当時の文部省南極地域観測統合推進本部が一般公募し、決定しました。
 
 この公募の際、日本の南極観測において、大きな功績のある白瀬中尉を称え、その名前を由来とした「しらせ」が、艦名の候補として大きな支持を集めますが、前述した通り、海上自衛隊は人名を艦名に使えませんでした。

 そこで当時の防衛庁は、砕氷艦の名称に関する内部規定を「名所旧跡のうち主として山又は氷河の名」とし、昭和基地近くにある白瀬中尉の功績を称えて命名された「白瀬氷河」からとって「しらせ」としたのです。実は「しらせ」の艦名は人名ではなく、「白瀬氷河」でした。

 現在運用されている、2代目「しらせ」に関しては、20年以上に渡り航海を行い、南極渡航回数が25回と日本で最も南極に行った艦だった「初代しらせ」の名称を受け継いで欲しいという、強い要望を受けて同じ艦名になり今に至っています。
 
【了】

【現在は「SHIRASE」表記!】これが、ウェザーニューズが買い取った初代「しらせ」です(画像)

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