「背の低いミニバン」今なら受け入れられる? ホンダの原点回帰は新しいのか、“時代に逆行”なのか
“小さく賢いEV”の逆風
ミニバンの世界でも、理屈から言えば、背が低い方が、空気抵抗が小さくて軽くなり、運動性能的には有利。しかし、現実には理屈ではなく、背が高くて立派なクルマが好まれています。軽自動車のベストセラーカーであるホンダの「N-BOX」も、非常に背が高く、広い空間が売り。実際のところ、「N-BOX」の全高は1790mm(2WD車)もあって、「オデッセイ」よりも背が高いのです。
また、EVの世界でも、小さく賢いクルマよりも、大きくて立派で、バッテリーを大量に搭載した高額なクルマばかりというのが現実です。「小さくて賢い」を売りにした「ホンダe」は残念ながら、発売終了となってしまいました。
そういう意味で、ホンダの「0(ゼロ)シリーズ」は、EVにおいては、重くてデカイという「世界の潮流に逆行」しているという見方もできます。
しかし、ホンダの「MM思想」が間違っているわけではありません。過去に何度もヒットを生み出していますし、理屈的には、非常にまっとうで有用です。逆に、今のミニバン人気が少々いびつともいえるでしょう。
ですから、本格的なEV時代が到来したときに、顧客がどのような価値を求めるかは、まだわかりません。小さく、軽く、賢く、そして「MM思想」がEVに通じるのか。それとも日本のミニバン市場のように、見栄えの良い、大きくて重いクルマが人気となるのか――そこで重要となってくるのが、新しい「0シリーズ」のスペック(性能や価格)です。そのスペックが、ユーザーのハートをつかめるかどうかに注目です。
※一部修正しました(1/28 18:37)
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
コメント