「十字マークはちょっと…」「月のマークもちょっと…」 実は複数ある公式「赤十字マークの代わり」知ってますか?
赤の十字はどうしても嫌という人々は?
しかし、戦場で敵味方なく救護を行うという考え方には賛同できても、どうしてもキリスト教を連想させる十字のマークは受け入れられないという、イスラム教徒やユダヤ教徒などの人々もいました。しかし、戦場でこのマークをつけずに活動を行えば、攻撃の対象になることも十分にあります。
そこで赤十字マークに抵抗のあったイスラム国家が中心となり新たなマークが生み出されました。それが白地に赤い三日月を描いた赤新月のマークです。こちらのマークは1865年にジュネーブ条約へ加盟したオスマン帝国(現在のトルコやシリア、サウジアラビアなどを領地とした帝国)が、国民の大半を占めるイスラム教徒に配慮する形で1876年に考案、赤十字マークと同等に扱うことが決められました。
また、第二次世界大戦後は、ユダヤ教を国教とするイスラエルで赤盾ダビド公社(またはマーゲン・ダビド公社)という赤十字社に相当する組織が、赤いダビデの星のマークを掲げて活動を行っていました。
しかし、このマークは国際的に認められてはおらず、国際法で守られたものではありませんでした。しかもこのダビデの星のマークは宗教的な意味合いが強く、宗教や特定の国を連想させない中性的でユニバーサルなマークを望む赤十字社やイスラム諸国からの反対にあい、なかなかマークを赤十字、赤新月同様に認めてもらうことは難しかったのです。
それでも中東は「火薬庫」とも称される紛争地域です。彼らの活動がなければ、被害は広がってしまいます。そこで、マークをダビデの星ではなく、菱形にすることで2005年に赤十字、赤新月同様の承認を得ることができました。これにより、イスラエルも人道救助活動を積極的に行うことができるようになったのです。
ちなみにもうひとつ、イランの赤獅子太陽と呼ばれるマークも国際赤十字の標章として登録されており、現在4つのマークが認められています。ただし、この赤獅子太陽マークは、1978年のイラン革命以降、使用されておらず現在は赤十字、赤新月、新たな菱形の赤水晶の3つのマークが使用されています。
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Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)
なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。
画像説明のレッドクリスタルと赤十字が逆ですね