救難機かスパイ機かWW2ドイツ救難部隊の表裏 敵も助けた騎士道精神と捨てられた赤十字
第2次世界大戦、史上最大の空戦といわれる「バトルオブブリテン」においては、敵味方分け隔てなく救助する白塗りに赤十字を掲げた水上機の姿がありました。ドイツ空軍の救難機仕様水上機、He59です。
ドイツ空軍先進の捜索救難システム
第2次世界大戦初頭、勢いに乗るドイツがイギリスの制空権を確保しようと繰り広げられた、独英両空軍の死闘が、1940(昭和15)年7月から始まった「バトルオブブリテン」です。
両軍のパイロットにとって、もうひとつの敵が海でした。空中戦で撃破され運良くパラシュートで脱出できても、英仏海峡の海水温は夏でも摂氏10度から15度と低く、不時着水したパイロットが長く水に漬かっていると低体温症となり、命の危険がありました。
イギリス侵攻に準備万端整えていたドイツは、パイロット救難にも積極的でした。空軍に海難救助部隊「ゼーノートディーンスト」を持っていたのです。元々は軍に協力する民間機関として発足しましたが、イギリスとの戦争に備えて、空軍が管轄下に置いていました。
ゼーノートディーンストには、本格的な救命機器を搭載した救難用水上機He59が14機、配備されます。機体は非武装で白く塗装され、民間登録記号、赤十字標章を付けて救難機であることを示しました。機内にはゴムボート、電熱寝袋、人工呼吸器、信号機器、海面着色剤など救命機器を搭載し、機体は旧式でしたが最先端装備の救難機です。この救難機と救助艇を組み合わせて、ドイツ空軍はゼーノートディーンストという、空海一体の救難システムを作り上げたのです。
またほとんどのドイツ空軍機にはゴムボートが搭載され、海に不時着水する場合、できるだけパラシュート降下せず機体ごと胴体着水し、海に漬からないようゴムボートに乗り移ることを推奨していました。
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