「デカいSUVは駐車料金3倍にしろ」パリ市民の怒りは車の潮流を変える? “際限ない巨大化”を止められるのか
ないがしろに? 「小さくて安い」という価値
クルマが大きくなったのは、安全性能の確保という面もありますし、世代交代のときに先代をより上回るようにした結果、どんどん大きく高級になったというのも理由です。「前よりも、ちょっとでも良いもの」をとやってきたら、どんどん大きく立派になってしまうというわけです。
SUVも見栄えの良さが人気の理由ですし、大型化も根本的には見栄えが原因と言えます。つまり、「小さくて安い」という合理性よりも、「大きくて立派に見える」という見栄えが優先されているわけです。
今回のパリのSUV駐車料金に関する住民投票は、そうした大きな流れに、庶民がNOを突き付けた! というように見ることができます。カーボンニュートラルの流れの中で、クルマの電動化が進み、クルマの価格が高まっているのも、そうした理由のひとつかもしれません。見栄えよりも、安くて小さなクルマでいいでしょ! というわけです。
ちなみに日本の場合は、軽自動車がその解決策となります。2022年の新車乗用車販売の約334.8万台に対して、軽自動車は約122.5万台で、軽自動車の販売の割合は約36%にも達しています。1990年の約16%、2000年の約30%から、徐々に高まり続けているのは、日本の国民が「小さくて安い」というクルマを支持しているという大きな証になります。
基本的に、クルマのトレンドはユーザーが決めるもの。今回、パリの市民は、大きなSUVにNOという判断を下しました。そうなれば当然、小さくて安いコンパクトカーの人気が高まるはず。そしてコンパクトカーの人気が高まれば、メーカーもコンパクトカー開発に力を入れて、よいコンパクトカーが増えて、さらなるコンパクトカー人気につながることでしょう。まるで、“風が吹けば桶屋が儲かる”のような論調ですが、可能性がないわけではありません。今回の事例が、SUVに限らない“際限のない巨大化”を止める動きにつながるのかに注目です。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
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