まるで走るバスタブ! 80年前の「泳ぐフォルクスワーゲン」完全レストア車が日本になぜ? ある企業の「資料」に

大阪の造形メーカー、海洋堂には実物のドイツ軍用車両が保管されています。いくつかあるなかで、目についたのがバスタブのようなユニークな形状をしたクルマです。実はこれ、日本に数えるほどしかない激レア車でした。

ポルシェ博士の国民車から軍用車へ

 このドイツ軍用の水陸両用車「シュビムワーゲン」のルーツを辿ると、前述した“国民車”、すなわち「フォルクスワーゲン」に行き着きます。

 1934(昭和9)年3月、すでにドイツの政権を掌握していたヒトラー総統は、ベルリンで開催された自動車ショーでの演説において、広く国民に自動車を普及させる国民車構想を発表します。そして大衆車の開発に取り組んでいたフェルディナント・ポルシェ博士に白羽の矢を立て、その開発を依頼しました。

 こうして1938(昭和13)年に誕生したのが、有名な「フォルクスワーゲン」のTyp 1(タイプ1)、いわゆる「ビートル」です。同車は大戦後も造られ続けられ、21世紀初頭までに累計で2150万台以上も生産された、屈指のメジャーモデルです。

 ただ、ドイツ軍やポルシェ博士の設計チームは、早い時期からこの国民車の軍用化も考えていました。それがTyp82「キューベルワーゲン」です。

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1943(昭和18)年頃に2人のドイツ兵が乗り込んで、後部のスクリューを下ろして水上を航行する「シュビムワーゲン」。ドイツ国防軍(陸軍)や武装親衛隊などで使用された(吉川和篤所蔵)。

 同車は「フォルクスワーゲン」のコンポーネントに、生産効率の良いプレス製の箱型ボディを架装したものです。しかし、エンジンと駆動方式が「フォルクスワーゲン」そのままのリアエンジン・リアドライブ(RR)方式であったため、アメリカ軍のジープのような高い悪路走破性は得られませんでした。それでも1940(昭和15)年8月から1945(昭和20)年4月までに5万1000台近く生産されて、ドイツ軍の自動車化を下支えしています。

 このように、大戦前半からドイツ軍将兵の足グルマとして多用された「キューベルワーゲン」ですが、いざ前線に投入されると河川や小さな湖沼程度なら独力で渡れる水陸両用車の要望が高まりました。そこで「キューベルワーゲン」をベースに本格的な小型軍用車両として開発されたのがTyp166「シュビムワーゲン」です。

 1942(昭和17)年から生産が開始された同車は、角張った箱型ボディの「キューベルワーゲン」とは異なり、曲面構成のボディなのが特徴です。しかし、このような形状にすることで軽量化と強度確保の両立に成功しています。

 足回りは不整地に強い四輪駆動となったほか、エンジンも出力が向上したものになっています。ホイールベースも「キューベルワーゲン」より40cm短い200cmにしたことで、取り回しや悪路走破性などが向上しました。そして後部には、エンジン駆動の切り換えで回るスクリューも装備されています。

【おぉ、簡素!】これで水陸両用いけたのか「シュビムワーゲン」の車内(写真)

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