まるで走るバスタブ! 80年前の「泳ぐフォルクスワーゲン」完全レストア車が日本になぜ? ある企業の「資料」に
世界的にも貴重な実物「シュビムワーゲン」
こうして、軍用車としても完成の域に達した「シュビムワーゲン」は終戦までに1万4000台以上生産されましたが、原型の「キューベルワーゲン」と比べるとその生産数は3分の1以下であり、しかもその機動性の高さゆえに酷使された車体も多かったことから、現在では実物車両があまり残ってない状況です。
それでも1988(昭和63)年からヨーロッパやアメリカのコレクターの手を経て少しずつ日本にも来ており、いまでは3台以上が国内にあるとのこと。なお最近では、フレームやミッション、フロントデファレンシャルなどは実物を使用するものの、ボディは新造という、いわゆるリファービッシュ方式で修復した「シュビムワーゲン」もチェコなどで生まれているといいます。
海洋堂の宮脇専務が購入した「シュビムワーゲン」もそんな実物の1台になります。ハナシを聞いたところ、ブルパック式のデフォルメシリーズなどを開発する際に資料として役立っているのだそう。また以前、ミリタリーイベントなどに貸し出された際には、宮脇専務もドイツ国防軍の将校に扮して2人の兵士が乗った「シュビムワーゲン」の横に立ち、往年のタミヤ模型のボックスアートを完全再現することで、話題になったこともありました。
2024年2月現在、この車両は国土交通省の自動車登録を行っていないため、ナンバープレートは付いていません。しかし、国内の保安基準に合わせてウインカーやテールランプなどはすでに追加で装備されています。
宮脇専務も、そのうち同車のポテンシャルを活かした水上航行も行ってみたいと話されていたので、いつの日かそうしたイベントが実現する事を願わずにはいられません。
【了】
Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)
1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集~チハから新砲塔チハまで~」「第二次大戦のイタリア軍装写真集 」など。
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