「翼にジェットエンジン載っけた」異形NASA機、実は元プロペラ機!? 有能機がなぜ魔改造されたのか

プロペラ機のエンジンを取り払い、翼の上に4基のジェットエンジンを載せるという“魔改造”を施した実証機をかつてNASAが開発しました。なぜそのような機体が作られたのでしょうか。

DHC-5ベースで誕生した異形実証機

 1970年代にジェット機が普及してくると、空港周辺ではジェット機の騒音が社会問題として顕在化してきました。

Large 20240326 01
1985年8月、アボツフォード航空ショーでデモフライトするカナダ空軍のCC-115「バッファロー」(細谷泰正撮影)。

 そこで、NASAとカナダ政府は共同でジェット機の低騒音化の研究を始めます。研究の目的はジェットエンジンの低騒音化、そして離陸時の上昇角度と着陸時の進入角度を増やすことで影響が及ぶ地域を減らすこと。そこで、2種類の実証機がDHC-5を改造して製作されることになりました。

 最初の実証機はオーグメント翼実験機としてDHC-5を改造することになりました。主翼は新しく作り変えられ、補助翼とフラップの両方に吹き出し機構が組み込まれました。プロペラエンジンに代わってロールス・ロイス・スぺイを改造した特殊なファンエンジンが搭載され、ファンダクトから吹き出し用の空気が供給される仕組みでした。

 そして、もう一つのDHC-5(C-8A)ベースの実証機が「QSRA」です。これは「静かな短距離実験機(Quiet Short-haul Research Aircraft)」の頭文字を採ったものです。推進装置であるプロペラを廃し、主翼前方に乗せる形で、4基の低騒音ファンエンジンを設置しています。

 これはエンジンの排気を主翼の上面に沿って流すことで揚力を増やし、離着陸性能を改善することが目的でした。ただでさえ短距離離着陸性能に優れたDHC-5をベースとして、さらにその性能を尖らせた実験機ということもあり、海外航空メディア「FLYING」によると、離陸滑走距離約203m(664ft)、着陸滑走距離約168m(550ft)を最大パフォーマンスの数値として打ち出されたとのこと。実際に飛行試験も行われています。

 なお、その後、これらの実証機によって得られたデータを利用した輸送機は登場しませんでしたが、その理由は1980年代から進んだジェットエンジンのハイバイパス化によってジェット機の騒音が減少したことではないかと筆者は考えています。

 ちなみに、QSRAのような位置にエンジンを取り付ける方式は米空軍の試作輸送機YC-14や日本の実験機「飛鳥」でも採用されています。

【了】

【写真】明らか変! これが「魔改造DHC-5」の全貌です

Writer:

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス