新型「やくも」本当に酔わないのか? 乗り物酔いする鉄道カメラマンが捨て身の実証!

いよいよ出発! 酔い止めは飲んでない!

 そんな明るい空間の車内を見惚れているうちに、13時16分、生山駅を発車。ただ3番ホームから本線進入時の揺れで動いているのが分かったぐらいで、その静かさに驚くばかりでした。列車は伯備線の黒坂-根雨間にある有名撮影地、通称「ネウクロ」を、営業運転を想定した高速運転で駆け抜けていきます。

 親子で参加した人は「いつの間に走って、いつの間に止まっているのか、分からないぐらい乗り心地がいいです」。子供たちはノビノビシート化したコンバートメントで思い思いに転がっていました。

 前述の通り、重度の乗り物酔いをする筆者ですが、いつもは欠かさない酔い止めも今日は飲んでいません。乗車して30分が経過しても、興奮も手伝ってか、気分は上々。この273系の最大の売りである国内初の「車上型制御振り子」方式が利いている証拠でしょう。

 これはカーブの多い伯備線を克服すべくJR西日本・鉄道総研・川崎車両が共同開発した振り子方式で、あらかじめ登録している曲線データと走行地点のデータを連続して照合し続け、最適なタイミングを計って車体を傾斜させるというもの。従来の、自然の遠心力に任せてのやや強引な傾き方をした振り子式とは全く違います。窓のワイドさもあり、視覚的にも閉鎖感を持たせないのも有効に働いていると思います。

 乗車45分経過したころ右車窓が開け、天候は良くなかったものの、少しだけ鳥取のランドマークである大山が見えました。これが雪をかぶった美しい稜線だったらと、余裕の気持ちで14時13分、終点の米子駅に到着。

 約1時間の試乗会で、パンフレットにある「乗り物酔い評価指標、最大23%改善」は伊達や酔狂ではないと実感しました。

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新型「やくも」273系コンパートメント。窓がワイドサイズで眺めもいい(坪内政美撮影)。

●様変わりした米子駅に「やくもラウンジ」

 米子駅は以前、社屋を兼ねた武骨なコンクリート建築、いわゆる国鉄建築の駅舎でしたが、2023年7月にリニューアル。広大な車両基地を南北に跨ぐ「がいなロード」を併設した橋上駅へと変貌しています。

 駅の待合室の名は「やくもラウンジ」と名付けられ、オリジナル塗装を施した自販機があるほか、カウンターや椅子には「やくも」にちなみ鳥取県産の智頭杉が使われており、ここにも新型「やくも」への連携した取り組みがうかがうことができます。「やくもラウンジ」の利用時間は始発の4時35分から23時までです。

【ほぼ座席フルフラットに!?】新型「やくも」内外装を見る(写真62枚)

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