中韓「領海広げて」に言い返すための仕事って!? 海保の最新鋭「測量船」は何するフネなのか 間もなく一般公開
その「任務」とは 中韓への警戒が背景に
「平洋」と「光洋」の建造が決まった背景には、2012(平成24)年に中国と韓国が、日本側の排他的経済水域(EEZ)と接する中間線を越え、沖縄トラフまで大陸棚を延長するよう大陸棚限界委員会(CLCS)に申請したということがあげられます。
こうした動きを受けて日本は、CLCSに対し「審査入りに必要となる事前の同意を与えていない」と説明。大陸棚延長の申請を検討しないよう求めた結果、同委員会は申請の審査順が来るまで、審査を行うか否かの判断を延期しました。
一方で中韓両国は相次いで新造測量船を整備し、海洋調査体制の強化を図っていることから、日本としても科学的な調査データの収集・整備が必要となっていました。
日本政府は2016(平成28)年に決定した「海上保安体制強化に関する方針」のなかで「海洋調査体制の強化」を明記。これに基づき海保では大型測量船「平洋」型2隻の新造だけでなく、既存の測量船「昭洋」と「拓洋」の高機能化、ビーチ350型測量機「あおばずく」の導入などを進めてきました。
加えて2022年12月には、新たに決まった「海上保安能力強化に関する方針」において「海洋権益確保に資する優位性を持った海洋調査能力」を構築することが明記されたことで、2024年度予算で老朽化した測量船を代替するために、大型測量船1隻の新造予算(約22億円)が計上されています。
日本にとって海は外国との貿易を支える物流ルートであるとともに、新鮮な魚介藻類を得られる食糧確保の場です。ただ、領海と排他的経済水域(EEZ)と合わせた広さは領土面積の12倍に相当する約447万平方キロメートルもあり、海の恩恵を最大限に得るためには、海の情報を事細かに知る必要があります。
海底地形調査が得意な「平洋」、海底地質調査が得意な「光洋」。それぞれが持つ最新鋭の機器を活用し、海洋権益の確保はもちろん海洋資源や防災といった、海にまつわる多くの調査を担うことを期待しています。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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