JRの定期券、安すぎ? 割引率を改められないワケ 130年間いつだって“国策”
リモートワークが普及しているものの、鉄道利用者で依然として最大のボリュームを占めているのが、定期券(定期乗車券)の利用者です。かつて通勤・通学の主流は回数券でしたが、どういった経緯で定期券に置き換わっていったのでしょうか。
鉄道旅客で最大ボリュームを占める定期利用者
コロナ禍が鉄道に及ぼした影響のひとつが、リモートワークやフレックスなど自由度の高い働き方の普及による通勤客の減少です。国土交通省が毎年行っている混雑率調査によれば、2019年と比較して2022年の利用者は多くの路線で3割前後減少しており、車内混雑はかなり緩和されています。
これまで通勤者は、会社から支給される「通勤定期乗車券」を利用するのが当然でした。最も割引率が高いJRの6か月定期だと、月12日利用すれば元が取れます。毎日利用する前提なら非常にお得です。
しかし月12回、週3回以上と考えれば、リモートワークの頻度によってはギリギリ。より割引率の低い事業者だと定期券を買うメリットがありません。ICカード利用のポイントサービス導入も、その追い風でしょう。
とはいえ依然として定期利用者は最大ボリュームです。大手私鉄15社の輸送人員に占める通勤・通学定期券(2022年度)の割合を見ると、名鉄の69%が最大、阪急の52%が最小で、全社とも定期利用者が過半数を占めています。
そんな鉄道利用の中心である定期券。いつ頃に登場し、なぜ普及したのか、そして鉄道事業者にとってどんな存在だったのでしょうか。
東京で路面電車が開業したのは1903(明治36)年のこと。翌年に中央線、1909(明治42)年には山手線に電車が走り始めましたが、この頃には「通勤ラッシュ」はありませんでした。電車は基本的に朝から晩まで、ほぼ同じ間隔で運転していました。
というのも、電車通勤とは郊外の住宅から都心の業務地まで通う勤務形態があって初めて成り立つものであり、明治時代は職場併設あるいは近所に住む「職住近接」が主流だったからです。
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