JRの定期券、安すぎ? 割引率を改められないワケ 130年間いつだって“国策”

リモートワークが普及しているものの、鉄道利用者で依然として最大のボリュームを占めているのが、定期券(定期乗車券)の利用者です。かつて通勤・通学の主流は回数券でしたが、どういった経緯で定期券に置き換わっていったのでしょうか。

戦後に割引率が縮小されたワケは?

 当然、割引率は大幅に上がり、普通定期は53~80%、通学定期は最大88%となり、一方の回数券は普通運賃と同様に値上がりしたため、徐々に定期券利用が増えました。

 1920(大正9)年に27%だった輸送人員定期比率は、1931(昭和6)年に51%となり逆転しますが、大幅な割引のため収入の比率は8%に過ぎませんでした。なお、国の免許、監督を受ける私鉄も国有鉄道ほどではないですが、4~8割引されていました。

 戦時中、終戦直後の特殊な状況は省きますが、事態が変わったのは1950年代のこと。高度成長で利用者が急増し、輸送力増強ために莫大な投資をしなければならなくなったのです。

 増加分の大半が通勤・通学利用者、つまり朝ラッシュの乗客ですが、そのための車両や施設は朝しか使わない効率の悪い資産です。しかも原因となる定期利用者は大幅な割引をされているのです。

 そこで国鉄、私鉄各社は運賃の値上げと割引率の縮小を求めました。政府は物価抑制を名目に公共料金の値上げに消極的でしたが、ない袖は振れないので、経営努力を条件に徐々に引き下げられます。

 1960年代に70%だった平均割引率は、オイルショックのあった70年代に50%台まで下がり、80年代に40%台、現在は30%台まで縮小しました。この結果、地下鉄乗り入れや複々線化、長編成化が促進され、現在のネットワークが実現しました。

 一方、現在も50%近い割引率を維持しているのがJR本州3社(東日本・東海・西日本)です。これは国鉄がかつて国鉄運賃法で、1か月または3か月定期は「普通旅客運賃の100分の50に相当する額をこえることができない」、6か月定期は「100分の40に相当する額をこえることができない」と割引率が決められていたことに由来し、民営化後も運賃水準を維持している結果です。

 それでもJR東日本のオフピーク定期券導入など、状況は変化しつつあります。各種運賃制度の見直しが叫ばれる今、定期券のあり方も議論が進むことでしょう。

【了】

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Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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