「修学旅行が忙しいので高速バス運休」という苦渋の決断 難しくなる“需要爆発”への対応 人手不足でどう乗り切る

勤務調整の神ワザで乗り切ってきた“需要爆発”

 そもそも、路線バスの仕業(ダイヤ)は、平日の方が週末より多い一方、高速バスは週末に続行便が多く出るので、仕業数は補完関係にあると言えます。また貸切バスは春と秋の旅行シーズンの稼働率が高く、また大型イベントやクルーズ船の寄港があるとその日だけ需要が「爆発」します。車両数も乗務員数も限りある中、需要の波動に対応するための相互の応援体制は古くから各社で定着しています。

 路線バス乗務員は、「交番」と呼ばれる勤務シフトが先々まで決まっているのが一般的です。法令で「1日に運転できる時間の前後2日の平均」とか「退勤から次の出勤までの最低の時間(インターバル)」などかなり細かい規制があり、それに合わせてシフトが組まれているのです。

 高速バスや貸切バスに応援乗務できる人は限られるため、応援を出すとシフトが崩れてしまいますが、応援に行く人、その仕業を公休(休日)出勤などで穴埋めする人、もともと高速バス担当の人など、全ての乗務員の勤務が法令の範囲内に収まるよう、運行管理者がパズルを解くように勤務を調整するのです。

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大型クルーズ船が寄港すると貸切バスの需要が一気に高まる。左の船は「ダイヤモンドプリンセス」(成定竜一撮影)。

 大手私鉄系事業者の中には、京王バスや東急バス、名鉄バスのように高速バス専門、またはほぼ専門の営業所を持つ会社もあります。一般的に、公休者の数はどの曜日も同じなので、路線バスのダイヤ数が減る週末を中心に、路線バス営業所から高速バス営業所に応援出勤を出すのが普通です。将来、高速バスや貸切バスをメインで担当したい若手の路線バス乗務員には、全長12mの高速バス車両の実績を積む貴重な機会でもあります。

 新宿~富士五湖線など週末に特に需要が膨らむ路線を運行する事業者にとっては、路線バスからの応援体制は、週末に「満席お断り」を減らし需要に最大に応えるための大きな武器でした。

 しかし、慢性的な乗務員不足で、その応援も以前より難しくなりつつあります。

【写真】「ウィラーです」「JRです」→全然違う会社のバスが!?

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