「修学旅行が忙しいので高速バス運休」という苦渋の決断 難しくなる“需要爆発”への対応 人手不足でどう乗り切る
他社に「助けて!」今後ますます重要に?
国全体の年齢別人口構成を見ると、50歳の人(「団塊ジュニア」)が約200万人いるのに対し、今年の20歳は112万人、今年の赤ちゃんは約72万人(見込み)しかいません。急速な人口減少、とりわけ生産年齢人口の減少で、あらゆる業界が極端な人手不足に陥っています。
バス業界でも運賃値上げとそれに伴う待遇改善が相次いでいますが、他業界も賃上げするので簡単に解決しない上、子どもの数を考えると人手不足は長く続きそうです。路線バス営業所としては、所属乗務員に十分な休みを取ってもらうには高速バスの応援まで手が回らず、続行便が不足するケースが増えています。
ましてや、大手私鉄系でも高速バス事業が別法人となっている会社(小田急系、阪急系など)ではその応援体制も組めません。さらに、JR系や高速ツアーバスからの移行事業者らは高速バス専業(ほぼ専業を含む)または高速バスと貸切バスのみを運行しており、波動対応は困難です。
それを見越して、国は2012年から「管理の受委託」制度を充実させました。共同運行先や資本関係のある乗合バス(高速バスなど)事業者に加え、貸切バス事業者に対しても高速バスの運行の一部を委託可能になり、その条件や手続きも簡素化されています。
貸切バス事業者から見ると、国内客、訪日客(インバウンド)ともに旅行形態が団体旅行から個人旅行へとシフトが進む上、少子化で学級数が減少し修学旅行や遠足の台数が減っており、長期的には苦戦が予測されます。インバウンドの主役は今やFIT(個人自由旅行)で、バス業界では高速バスや定期観光バスの領域です。だからと言って、B to B(旅行会社など法人向け)事業を行っていた会社がB to C(個人向け)に変わるには大変なノウハウが必要です。
また、大都市圏の郊外部に立地する乗合バス事業者は、団地やニュータウンから駅までの通勤路線が多い上、大学の郊外キャンパスのスクールバスを受託するケースもあり、平日と週末とで仕業(ダイヤ)数に大きな差がある傾向です。
今後、大都市立地で大規模に高速バス路線を展開する事業者らが、週末や夏期、年末年始などの続行便の台数を確保する目的で、資本関係の有無にかかわらず、比較的大手の貸切専業のバス事業者や郊外の乗合バス事業者などと積極的に提携関係を結ぶというような、新たな動きもみられるかもしれません。
【了】
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
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