「電気を運ぶ船」は、こう使う! 横浜市と連携し“電気不足”防ぐ!? 港の脱炭素化で起こること
「電気運搬船」を開発中のベンチャー企業と東電グループが横浜市と連携。関東沖の洋上風力発電所から横浜港へと電気を“輸送”します。横浜港の脱炭素化に向けた取り組みを通じ、電気運搬船の使い方も見えてきました。
電気が足りなくなるのは明白→ならば「運べ」
横浜市は2024年4月24日、横浜港のカーボンニュートラルポート(CNP)化に必要な電力ネットワークの将来構想や新たなグリーン電力供給拠点の構築に向けて、東京電力グループの東京電力パワーグリッドや、「電気運搬船」を開発しているパワーエックス子会社の海上パワーグリッドと覚書を締結しました。
3者は、陸上施設である水力発電所や太陽光発電所に加え、関東沖の洋上風力発電所で作られた電気を「電気運搬船」で横浜港へ輸送し、クルーズ船への電力供給などに活用することを目指して検討を進めていきます。
覚書を結んだ経緯について、東京電力パワーグリッドの佐藤育子常務執行役員は「当社は東電版まちづくりと称し、地元自治体や企業と共に地域のニーズを踏まえた電力エネルギーの活用について協業を進めている。新たな電力供給拠点について横浜市に相談したところ、CNP構想と絡めた今回の検討に参画することになった」と説明します。
横浜市の臨海部では、みなとみらい21地区の開発や新本牧埠頭の整備、山下埠頭の再開発など、さまざまなプロジェクトが立ち上がっています。ビルやコンテナターミナルといった施設が増えることにより、将来的な電力需要の増加が見込まれる一方で、脱炭素化が進展していく中で石炭火力発電所の削減や再生可能エネルギーの普及といった電力需給バランスの変動も想定されます。そのため、増加する電力需要を支える電力供給拠点の新設が必要となっています。
さらに、カーボンニュートラルポートを実現する上で、接岸中の船舶へ陸上から電力を供給する仕組みも不可欠です。
停泊中の船舶は、重油などを燃料とするディーゼル発電機を使用して電源を確保しています。これによるCO2(二酸化炭素)排出量は、横浜市臨海部の運輸部門の約38%を占めており、CO2を削減するためには陸上からの電力供給(陸電供給)と船舶のアイドリングストップが効果的です。
特に客室やサービス施設などで大量の電力を消費するクルーズ船は、GHG(温室効果ガス)の削減に向けて陸電接続に対応した機器の搭載が広がっています。外国クルーズ船を誘致するためには、港への陸電供給設備の設置が欠かせないのです。
「クルーズ船は6メガワットから大きいのだと10メガワットぐらい電気を使う。極端に言うと突然、東京ミッドタウンができたようなもの。しかし、それだけ電気を使って1日や2日もいない。そういう時に蓄電池があって、ハイブリッドで電力を供給するようになれば、電気系統の負荷が軽減できるようになるのではないか」(海上パワーグリッド 伊藤正裕社長)
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