世界史上“最悪の軍艦” 世紀の珍兵器「円形軍艦」なぜ誕生? 1発撃ったら“艦がグルグル回転”!?

就役後はかなり残念なことに…

 しかし、「ノヴゴロド」は、現在「建造されたうちで最悪の軍艦」という汚名を背負っています。それは、当初考えていた以上に使い勝手が悪かったことが原因です。

 ロシア海軍はこの「ノヴゴロド」を川の河口や沿岸防衛に使用しようと考えていたようです。セヴァストポリの港湾やドナウ川の河口などで運用が試みられましたが、その結果は散々だったといいます。

 まず船体がお盆のように薄いため、少々の波によりすぐにスクリューが水面より露出してしまいます。またその円形の形状のために非常に舵が効きにくく、通常時でスピードは時速6ノット(11km/h)程度。強い嵐の中ではほぼ操舵不能になりました。

 さらに搭載した砲にも問題がありました。搭載された20口径の11インチ砲は、伝統的な砲口の部分から弾や炸薬を込める前装砲となっており、次弾発射までに非常に長い時間が必要で、1発撃つのに約10分を要しました。

 同艦が建造を始めた頃の大型艦砲はまだ前装式のものが主流でしたが、就役する頃には既に現在のような後装式の砲が艦砲としても使われるような時代に入っており、すぐに前時代的な装備となりました。

 さらに、砲を発射するとその反動で艦が回転してしまうという事態に陥ることになりました。川の河口で運用しようにも、川の流れに逆らって進むには抵抗が大きく、なかなか進めないうえ、流れによっては舵を失ってクルクルと回転しながら流されていくような有様。回転し始めた「ノヴゴロド」は「自艦を中心として目眩を起こすほどの速さで容易に回転」「手が付けられないほど猛烈に回転し、艦上の全ての人が目眩で無力化された」などと書き残されており、相当なスピードで回転したことがわかります。

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本来はこの様に沖に出て戦闘もする予定だった(画像:パブリックドメイン)。

1877年の露土戦争で、同艦は実戦投入されますが、性能的に劣ると思われていたオスマン・トルコの艦艇に追いつくことができませんでした。皮肉にも、最初に軍艦保有制限をかいくぐるために主張したような「沿岸での浮き要塞」的な扱いとなり、ほとんど戦闘を行うこともなく戦争を終えます。

「ノヴゴロド」は、こうして「最悪の艦艇」のレッテルを貼られ、大きな活躍もないまま、1903年除籍となりました。しかし、現代の研究では、本来の使用目的である海岸防衛の軍艦としての方向性は間違っていなかったとして、再評価する声も上がっているようです。

【了】

【飛行機でも丸い珍兵器が!】これが、アメリカ軍が開発した“空飛ぶパンケーキ”です(写真)

Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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