だって「ミサイルもったいない」 戦闘機の“機関砲不要論”くつがえるか 考えざるを得ない“コスパ”
戦闘機はおよそ100年のあいだ、機関砲を搭載するか否かは議論が繰り返されてきました。そこには空対空ミサイルの存在が大きく、その技術や精度によって機関砲の立場も揺れ動きました。そして現代でも、完全消滅とはならなさそうです。
一度復活した機関砲
戦闘機に求められる装備について長年、決着のつかないひとつの論争があります。それは「戦闘機に機関砲を搭載する必要はあるのか」という問題です。
1910年代に戦闘機という機種が誕生して以降、最初の約40年については、戦闘機とは機関砲によって金属を空中に投射する存在であったといってよく、機関砲が最も重要な装備であったことに疑いの余地はありません。しかし1958(昭和33)年に誘導装置のついたロケット弾、すなわち空対空ミサイルが史上始めて実戦投入されると、機関砲は微妙な立場に追い込まれることになります。
戦闘機の戦いは空対空ミサイルの撃ち合いになるであろうという予言のもと、1960年代以降は数多くの機関砲を持たない戦闘機が誕生します。例えばMiG-21「フィッシュベッド」やF-4「ファントムII」などです。
しかしこの予言は時期尚早でした。初期の空対空ミサイルは発射条件が非常に厳しく、ミサイルの最小射程を割ってしまう距離での交戦も少なくなかったことや、信頼性も低かったことから、機関砲が適した状況も少なからず発生することが明らかとなると、前述のMiG-21やF-4にも機関砲が取り付けられ、また1970年代以降に開発された戦闘機の多くが機関砲固定搭載機となりました。
機関砲は復活しましたが、同時に空対空ミサイルの性能向上も絶え間なく行われていたことから、発射条件や信頼性の問題は徐々に解決されていきます。1980年代以降になると、空対空ミサイルは非常に高い確率で撃破を期待できるようになり、実際の空中戦でも機関砲が使われることはほぼなくなりました。このため機関砲は不要なのではないかという議論が消えることはありませんでした。
2000年代に入ると適切な条件下で発射された空対空ミサイルは必中を期待できるようになりました。もはや相手の空対空ミサイル射程に入ることは自殺行為となり、その結果、機関砲によるドッグファイトを挑むという行為は完全に廃れ、平時の信号射撃(警報射撃)やもっぱら対地攻撃専用の装備であるとみなされるようになります。
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