「へ、メーターもない?」ミニマムすぎる斬新SUVが好調 でもそれは“ボルボらしい”のか?
「メーターなし」は先進的か、コストダウンか
実際に、ボルボEX30に触れてみると、日本でも家具や雑貨で人気の高い北欧テイストを前面に打ち出した内外装は、ドイツ車やフランス車などの日本でメジャーな輸入車とも異なる世界観を見せてくれます。
T字を横にしたトールハンマーデザインヘッドライト、素材へのこだわりとフィットの良さを感じさせるシートなどのボルボらしい特徴を受け継ぎつつ、グリルレスのフロントマスクや、センターディスプレイのみの表示システムなどは、EVらしい新たなスタイルも打ち出されています。
ドライブに連れ出すと、手頃なサイズ感が生む取り回しの良さに加え、高い静粛性やモーターによる俊敏な加速など、BEVならではの価値が感じられます。
一方で、全高を抑えた結果、ボディ下部へのバッテリー搭載による後席の床面の高さ、それによる後席の着座姿勢への影響に加え、メーターパネル廃止に代表される合理化がもたらす操作系や表示系への影響を感じたのも確かです。
BEVとして、高価な駆動バッテリーを使いながらも現実的な価格を実現すべく、新たなアプローチによるコストダウンが行われています。それが分かりやすく反映されているのが、メーターパネルやスイッチ類の削減というわけです。さらに内部構造でいえば、車内に設置される配線の数や長さまで、切り詰められています。
それらの取り組みは、環境資源の有効活用にも繋がるため、決して悪いことではありません。ただ使い勝手という面では、既存のクルマとは異なる方向性に進み、ある意味の割りきりが生まれているのも事実なのです。
ボルボの普及型EVとしての役目を担うEX30、その“ボルボらしさ”を受け継ぎつつも劇的な改革を図る姿は、今後のEV専用車の在り方を知るうえで最適な1台といえるでしょう。ただ、先進性こそ際立つものの、合理的なEX30のスタンスは、これまでのボルボらしさが良くも悪くも薄まったように思える部分も有ります。
今後、唯一残った北欧生まれの量産車メーカーとして、ボルボがどう独自性を表現していくのか、筆者は注目しています。
【了】
Writer: 大音安弘(自動車ライター)
1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。
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