運転代行が「タクシーより安い」なぜ可能? 5.6万人が従事する“グレーな移動手段”の問題点 業界団体「安いからいいではない」
移動をクルマに頼る地方都市では、夜飲み後の移動手段として「運転代行」が欠かせません。その業界団体が国土交通大臣と面会。団体が「せめて最低利用料金の設定を」と訴えるその理由は、乗客の安全とも関わっています。
タクシーとやることは同じ でも「誰でもできる」
移動をクルマに頼る地方都市では、夜飲み後の移動手段として、タクシーと並び「運転代行」が欠かせない存在となっています。その業界団体が、警察庁を管理する国家公安委員会と、旅客運送を担当する国土交通省に要望書を提出。国交省では大臣と面会しました。
運転代行業は、飲酒などで運転できない運転者に代わって車両と人員の両方を送迎する事業で、通常は1台のクルマを用いて2人1組で営業しています。市街地などでタクシーに混じって客待ちをする様子を見かけることもあり、利用者にとって両者の違いはわかりにくいかもしれません。
しかし、運転代行はタクシーのように旅客運送でもなければ、車両を運ぶ貨物運送でもないのです。事業者で組織する公益社団法人「全国運転代行協会」の板橋勇二会長は、こう訴えます。
「お客さんを乗せて目的地まで運ぶ。運転代行もタクシーも同じですが、日本の標準産業分類では『その他の対個人サービス』で、運送業ではないのです」
運送業には、乗客の安全を確保し、事故を未然に防ぐ取り組みが強く求められています。また、価格競争のために安全コストを削ることは禁じられています。利用者にとっては、安いに越したことはないのですが、過去何度も安全コストを切り詰めたダンピングが、悲惨な事故を招いていることから、乗員だけでなく、事業者の運行管理体制も厳しく問われているのです。
一方、運転代行で送迎を行う場合は二種免許が必要なものの、車両管理や運行管理の責任者は「安全運転管理者」の講習を受けた資格者の届出だけで済みます。
安全運転管理者は、5台以上の車両を所有する団体で設置が義務付けられた運行管理の責任者で、運転代行に限った資格ではありません。運送業と同じ仕事をしても「その他の対個人サービス」に位置づけられているため、運送業のような特別な資格も知見も必要ないのです。板橋会長は、こう指摘します。
「運転代行は最低限の条件で、警察に必要書類を提出すれば、公安委員会から認定番号を受け、ほとんど誰でも開業することができます。しかし、健全な事業経営と利用者保護は一体です。認定要件の厳守、厳格化を求めたい」
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