中国経済も減速気味だし… コンテナ船”巨艦化”はもう無理?「2万4000個が限界」の納得な理由

二大航路でも採算がとれない可能性も

 そして3つ目が、融通が利かないということです。

 前述したように、「2万4000TEU」クラスでさえ、あまりの巨大さから、事実上”二大航路専用船”となっており、しかも出入りできる港も非常に限られているのが実情です。

 このため、天変地異や戦乱など「イベントリスク」が発生し、二大航路の荷動きが一時的に激減したとしても、しばらくの間、”ヘルプ”として別の航路に振り向けて様子を見る、といった融通が利かないという難点があります。

 最後、4つ目に挙げられるのが、スクリュー1軸ではスピード出すのがムリという点です。

 コンテナ船は機関(エンジン)1基にスクリュー・プロペラ1軸の、いわゆる「1基・1軸」が普通で、「2万4000TEU」クラスでも、最高速力は20~25ノット(約37~46km/h)を発揮します。

 しかし、これ以上巨体だと「1基・1軸」ではスピードが出せず、機関2基、スクリュー2軸が不可欠となるようです。

 ただ機関部のコストは、建造費の約3割に達するため、1基を追加すれば建造費はかなり跳ね上がり、投資効率がかえって悪くなります。

 同時に機関部は、船内レイアウト上かなりのスペースを占めるため、機関を2基積めばその分コンテナ収納スペースを犠牲にせざるを得ず、これも輸送効率悪化の一因となります。

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コンテナ船を巨大化したら、ガントリークレーンを始めとした港湾施設も改修が必要になる(画像:写真AC)。

 これら4つの観点から、これ以上コンテナ船は大きくなり得ないと推察できるのです。ちなみに、この他にも全長400m超のコンテナ船は波浪で2つに折れないか、あるいはこの状態でコンテナを10層以上積み上げ、まるで壁のようになった船が真横から突風を受けた場合、転覆してしまうのではないか、などといった懸念もあります。

 こうしたことから、近年では「2万4000TEU」クラスですら大き過ぎ、今後はパナマ運河を航行できる「ネオパナマックス」サイズ(全長366m、全幅49m、喫水15.2m、1万4500TEU以下)の船の方が、小回りも利き何かと便利では、との考え方が世界の海運業界で出始めているようです。

 かつて地球上を支配した恐竜は、巨大に進化した挙句、急激な環境の変化に耐え切れず絶滅しました。ひょっとしたら、コンテナ船の”進化”は、恐竜の「過適応」とよく似た軌跡を歩んでいるのかもしれません。

【了】

【最初は小さかった】60年前に竣工! これが日本初のコンテナ船です(写真)

Writer: 深川孝行

1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。

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