領空侵犯機は撃墜…できません! 初めて入ってきた中国軍機への“対処ステップ”とは
「命令あるまで撃てない!」はホント?
このように、自衛隊機による武器の使用には厳格な基準が設けられていますが、原則として自衛隊機による武器使用はパイロット個人の判断で行えるものではありません。具体的には、対領空侵犯措置の司令塔である防空指令所にいる管制官を通じて、方面航空隊司令官などからの命令を受ける形で、パイロットが実施することになります。これは武器使用に限らず、たとえば信号射撃を含めた警告なども同様の流れです。
ただし、たとえば領空侵犯機が自衛隊機へ急に襲いかかってきた場合など、その許可を求める余裕がない場合などには、パイロット個人の判断で武器を使用することもできるというのが政府の見解です。
また、武器使用の基準に関しては、近年の安全保障環境の変化に伴い、その内容の見直しが図られています。たとえば、2023年はじめに起こったアメリカ本土への中国の偵察用高高度無人気球の飛来を受けて、無人気球などが民間航空機の航路を阻害したり、あるいは墜落の危険性があったりする場合には、武器を使用することが認められるようになりました。
【了】
Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
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