名古屋名物「反対車線にはみ出すバス」でどこまで行ける? 名駅から1時間の最長路線 終点が…存在しない!?

「菱野団地」そんなバス停はありません!?

 名鉄バスセンターから瀬戸市方面に向かうもう一つの系統・35系統菱野団地行きにも乗車してみました。名鉄バスセンターから瀬戸市内にある停留所の西原までは36系統と同様の経路を走行します。

 午前中、最初で最後の便である西原11時4分発のバスに乗車すると、先客が2人。やや延発し、西原2丁目交差点を右折したバスは35系統だけが走行する区間を走ります。瀬戸口町、西米泉町といった小さな停留所でそれぞれ下車していった様子をみると、普段から乗り慣れている乗客なのでしょう。

 やがてバスは原山台西に到着。周囲には背の高い集合住宅がいくつも現れました。車道をオーバークロスする歩道も見られ、ニュータウンらしさを醸し出しており、どうやら菱野団地に入ったようです。

 終点の菱野団地停留所まで乗り通してみようと思ったのですが、原山台東、萩山台北、センター前、萩山台南、八幡台東と進み、八幡台西停留所に到着。ここが終点だというのです。「菱野団地」という名前の停留所はついに現れませんでした。

 実は、菱野団地一帯にある原山台西~八幡台西の各停留所の総称が「菱野団地」となっており、菱野団地という停留所は設置されていません。「菱野団地」というバスの行き先表示は目的地を表しているだけで、終点の停留所名を表しているわけではないというのが真相でした。

 菱野団地へは、瀬戸駅前や名古屋市営地下鉄東山線の藤が丘駅からバスが出ており、住民はこれらを活用して出かけています。八幡台西で話を聞いたご婦人は「名古屋駅まで行くときは、普段は瀬戸駅前に出ています。タイミングが合えば名鉄バスセンター行きに乗りますが……」とのこと。

 現在の35系統は朝に名鉄バスセンターヘ向かい、昼間に運行がなく、夕方に菱野団地へ帰ってくる運用が中心のダイヤ。これでは乗り換えがないといっても、利用しづらいでしょう。長距離を走る35・36系統ですが、区間利用がほとんどというのが実態のようです。

 なお、瀬戸市は「国鉄バス発祥の地」であり、いわばバスの聖地。名鉄バスセンターから長距離乗車を味わい、最古の国鉄バス駅・瀬戸記念橋の跡地に立つ記念碑を見学するのも楽しいかもしれません。

【了】

【画像】長ぇぇェェ!!!これが名古屋名物「基幹バス」の最長路線です(路線図と写真)

Writer: 水野二千翔(高円寺工房/モビリティライター)

レイルウェイライター種村直樹氏に憧れ鉄道・バスライターを志す。これまで「バスマガジン」や「Rail Magazine」で執筆。現在はモビリティ全般に興味を広げ、ドローンや空飛ぶクルマの記事も。国家資格「一等無人航空機操縦士」所持。近著に「ドローン3.0時代のビジネスハック」ほか。

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