“見た目ほぼ戦闘機”な旅客機つくります! ボーイングがブチ上げた“新型機構想”なぜ頓挫? てか作る気あったの…?
なぜ「ちょっと速いボーイングの異形機」は頓挫したのか
しかし、ソニック・クルーザーは、航空会社の興味は引くことなく、2002年暮れには早々と棚上げされることになります。その背景には、2001年に発生した米国同時多発テロによる航空旅客需要の大幅な落ち込みもありましたが、速度を15%ほど向上しても近距離路線は時間短縮効果が見込めず、航空会社の興味をひかなかったためとされています。
ボーイングはなぜ、この時期にソニック・クルーザーを打ち出したのでしょうか。
当時はエアバスが、総2階建ての超大型機「A380」の開発を進めていたのに対し、ボーイングは「ジャンボ機」こと747シリーズに次ぐような、まったく新しい超大型機の開発については消極的でした。
このため、新型の超大型機を出すエアバスに向いた航空会社の目をそらそうと、あえて中型機クラスでソニック・クルーザーを発表したと見られています。また、技術的挑戦・開発費も「コンコルド」のような超音速旅客機より抑制できるとみたのかもしれません。
棚上げされたとはいえ、航空機の開発はこのようなしたたかさも必要なうえ、リスクも伴います。のちの787でのバッテリー(リチウムイオン電池)のトラブルや、単通路機「737MAX」一連のトラブルなどで辛酸をなめた末、ボーイングは近年、技術主体からコストカットで利益を上げる企業に変化したとも言われています。
ボーイングは2024年9月、労使交渉の場で「次の新型機はワシントン州(本社のあるシアトル近郊を意味する)で製造する」と表明しました。しかし、その直後、同社の労働組合はストライキを実行し、こちらの方が大きな社会的関心を寄せられることとなりました。
しかし、いずれ同社は「しかるべき時期」に、新型機開発のゴーサインを出すでしょう。一瞬の言及でも注目が集まったのも、新型機への関心が高いゆえです。ソニック・クルーザーのような奇手は、リスクを最小限に抑えるため取ることはないと思われるものの、ボーイングがいつ新型機開発に踏み切るかも、経営安定化とともに注目されるポイントでしょう。
【了】
Writer: 清水次郎(航空ライター)
飛行機好きが高じて、旅客機・自衛隊機の別を問わず寄稿を続ける。
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