「世界で最も美しい船」いかにも古臭い!? 「帆船」がなぜ今も重宝されるのか
2024年8月末、イタリア海軍の練習艦「アメリゴ・ヴェスプッチ」が日本にやってきました。「最も美しい帆船」と呼ばれる同艦は1931年の建造です。すでに蒸気船が普及していた時代、なぜ帆船なのでしょうか。
練習艦では各国で見られる
イタリア海軍の練習艦「アメリゴ・ヴェスプッチ」が2024年8月末、世界一周航海の中で、日本に立ち寄りました。この船は1931(昭和6)年に就役した帆船で、今なお現役の練習艦として運用されています。
1931年といえば、フランスが新型戦艦「ダンケルク」を起工した年で、イタリアはこれに対抗するために4万トンを超える巨大戦艦「リットリオ」級を建造していますから、この時代でも帆船は過去のものとも感じられます。
しかし、現代の日本でも海技教育機構では、帆走練習船「日本丸」「海王丸」が運用されますし、アメリカ沿岸警備隊でも海洋実習船「イーグル」が使われています。
ではなぜ帆船が練習艦に使われるのか――それは、船舶の基本を学ぶのに適しているからです。
自然の力である風と波の動きを感じ取り、自然環境に対応したり、船を操作する感覚を養ったりするうえで、動力や自動化されたシステムに頼らない帆船は適しています。また、複数のクルーが協力して帆を張ったり、適時調整したりする必要があるため、チームワークや体力・精神力の育成にも向いているわけです。現在では、伝統文化の継承や、環境負荷の小ささも利点と見なされています。
「アメリゴ・ヴェスプッチ」に話を戻します。同艦は1925(大正14)年に、18世紀後半の74門戦列艦に着想を得て計画されました。戦列艦とは、16世紀のガレオン船から発展した軍艦です。ガレオン船はイギリス、フランス、スペイン、オランダなどで建造された大型帆船で、本国と海外植民地を結ぶ長期航海に向いていました。
大砲を搭載して軍艦としても使われ、スペインの無敵艦隊旗艦「サン・マルティン」は排水量1000トン、大砲50門、乗員600名の大型艦でした。このガレオン船の甲板を多層化し、大砲を甲板ではなく舷側装備とし、かつ大口径砲とした砲撃戦特化の戦闘艦が「戦列艦」です。
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