「世界で最も美しい船」いかにも古臭い!? 「帆船」がなぜ今も重宝されるのか
スクリュープロペラや蒸気機関の発達
1690年ごろから海戦の主役となった戦列艦は、1740年ごろにフランスで出現した74門戦列艦が火力・防御・帆走性能のバランスに優れるとされ、1805年のトラファルガー海戦などでも活躍しました。同海戦では、スペインの「サンティシマ・トリニダー」が排水量4950トン、大砲140門に達し、世界最大でした。しかし、大砲110門の戦列艦を造る場合でも、樹齢100年のオークの木が4000本も必要となるなど、大型帆船の建造は多大なリソースを食う国家事業でもありました。
一方、1783年に蒸気船が発明されます。当初普及した外輪船は、舷側に大きなスペースを取り攻撃目標にもなるため、軍艦には向きませんでした。しかし、スクリュープロペラの発明により、74門戦列艦「エイジャックス」が、1846年に蒸気機関とスクリューを搭載した汽走戦列艦に改装されます。
そして蒸気機関の進歩により帆走は不要となり、大きく空いた甲板に旋回砲塔が装備された、近代戦艦の形態となるわけです。
民間船では、1858年に完成した6本マストの機帆船「リバイアサン」(後に「グレート・イースタン」)は、外輪船ながら1万8915トンの鉄船体で、全長211m、速力14ノット(約26km/h)、旅客定員4000名を誇る、当時世界一の巨船でした。
なお、蒸気機関の場所を取らず、石炭補給も不要な帆船は商船として有用と考えられ、建造が続けられます。中国からイギリスに茶を運んだクリッパー船「カティサーク」は、当時の蒸気船をしのぐ17.5ノット(32.4km/h)の快速を誇りました。
そして木製が主だった船体も鋼鉄製となります。例えば1902(明治35)年に竣工したドイツの「プロイセン」は5本マストを持つ大型帆船で、排水量5081トン、全長132mの巨体に8000トンもの荷物を搭載し、最高20.5ノット(38km/h)で走る超高速帆船でした。しかし、第一次世界大戦により多くの商用帆船が失われたこともあり、商船としても軍艦としても、帆船の時代は終わりを告げるわけです。
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