エンジンのままでいい“夢の代替燃料”ついに製造開始 陸海空いける「合成燃料」ENEOSが日本初 「世界に発信できる」元首相も太鼓判

合成燃料は何が“強味”なのか

 合成燃料は電池などと比較して、一定の体積・重量に含まれるエネルギー量が大きいうえ、製造から輸送、利用まで石油燃料で使用している既存のインフラを活用できるため、水素やアンモニアなどの次世代燃料に比べて導入コストを抑えられることが可能です。

「液体燃料が全く無くなることはないと考えている。例えば航空機のように電化が難しい分野はある。どのような形になろうと、液体燃料はエネルギー密度も利便性もレジリエンスも高い」(ENEOS中央技術研究所サステナブル技術研究所 早坂和章所長)

 経済産業省もグリーン成長戦略の中で「大型車やジェット機が電動化・水素化した場合、液体燃料と同様の距離を移動する際、液体燃料よりも大容量の蓄電池・水素エネルギーが必要となる」と指摘し、「液体合成燃料は、電気・水素エネルギーへの代替が困難なモビリティ・製品がある限り存在し続けると考えられる」との見通しを示しています。

 特に合成燃料はCO2と水素が原料となるため、資源の制約を受けることなく工業的に大量生産することができることも、大きな利点としてあげられるでしょう。

 式典で祝辞に立った菅 義偉元首相は「カーボンニュートラル実現に向けては、運輸分野での脱炭素化が重要だ。その解決のカギとなるのが、電化と共に、水素と合成燃料の活用だ」と強調しました。

「合成燃料は航空機、自動車、船舶などにそのまま使えて、ガソリンスタンドやタンクローリーなどのインフラも活用できる。日本から世界に発信にできる次世代の燃料と思っているが、普及に向けては製造コストの低減が課題だ。さらなる研究開発を進め、大量生産に向けてステップアップしていくことを大いに期待している」(菅元首相)

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あいさつする菅元首相(深水千翔撮影)。

 ENEOSの山口敦治社長は「私たちはこれまで地球が長い時間をかけて生み出した資源である原油を利用してきた。一方、合成燃料は CO2 から人工的に、しかも短時間で作るので、どうしてもコストがかかる」と明かします。コスト削減の努力を継続するとしつつ、「合わせてこのコストを社会全体で負担するための仕組みが必要だ」とも。

「その点を社会の皆様に広くご理解いただくためにも、実証装置によるデモを役立てていく」と意気込みました。

【了】

【え…!】式典でドライビングテクニックを披露した「大物国会議員」(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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