アメリカ版新幹線「もしトラ」でまさかの“塩漬け”か?「トランプさん日本の鉄道を称賛したはずじゃ?」
意趣返しとの見方も
これに対し、トランプ氏が大統領に復帰すれば意趣返しのように、バイデン政権が力を入れてきた高速鉄道への補助金交付などを見直しかねないと前出のラフード氏は訴えます。根拠の1つとして「共和党は一般的に高速鉄道への投資をあまり信用していない」と指摘しました。
実際、トランプ氏は在任中の2019年、工事の遅れとコスト高騰に直面していたカリフォルニア州高速鉄道事業を「災難だ」と批判し、オバマ政権が割り当てた9億2900万ドルの補助金を撤回しています。また、トランプ氏はバイデン大統領のことを「アメリカ史上最低の大統領だ」とこき下ろし、政策を大きく転換する考えを明言しています。
しかも、トランプ氏は地球温暖化に懐疑的なことで知られています。政権を奪取した場合には気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」から再び離脱すると唱えており、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)が取材した民主党支持者は、「トランプ氏に高速鉄道が脱炭素化に役立つことを説いても馬の耳に念仏だよ」と揶揄しました。
一方、大統領選の民主党候補のカマラ・ハリス副大統領は脱炭素化の施策推進に前向きで、当選すれば「高速鉄道整備を含めた多くのバイデン政権の路線を引き継ぐのではないか」(アナリスト)とみられています。
先に述べたように、アメリカの高速鉄道計画には、一部で日本企業も関わっています。接戦が続く大統領選は、アメリカの高速鉄道の行方を占う試金石にもなりそうで、そのような観点からも決して他人事ではないといえるでしょう。
【了】
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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