「地下鉄延伸」かなり大変!? 「工事の段取り」果てしなく…でも掘り始めてから開通までは短かった
山ほどある申請と認可 工事までにやることとは
事業の前提となる許可を受けたあとは、設計と工事計画について鉄道事業法第8条に定められた「工事施行認可」を申請します。この時、やむを得ない事情から特別な設計を行う場合は、特別設計認可(特認)も必要です。
例えば13号線では、新宿三丁目~東新宿間(和光市方面)の線路勾配を都営新宿線、都営大江戸線のトンネルを避けて建設する制約から、省令で定められた35‰を超えた40‰としています。
もうひとつあわせて進めなければならないのが、都市計画の改定です。地下鉄、都市モノレール、新交通システムは都市計画法が定める「都市高速鉄道」であり、これらの新設や高架化による連続立体交差は、都市計画決定を経て事業化します。
事業者が知事に都市計画決定を依頼し、知事が都市計画案を作成。これを公告(一般の住民に知らせること)・縦覧(一般の人が閲覧できるようにすること)し、説明会などで意見を集めたうえで、必要に応じて修正します。その後、都市計画審議会の審議を経て国土交通大臣に申請し、大臣の認可を受けると都市計画が決定します。
同時に大規模な開発事業を実施する際に、あらかじめ事業が環境に与える影響を予測、評価することで、適正な環境配慮がなされるようにするための環境影響評価(環境アセスメント)を行い、都市計画案と同時に環境影響評価準備書を公告・縦覧します。
13号線は、2001(平成13)年に池袋~渋谷間の工事が始まり、2007年に路線名が「副都心線」に決定。そして2008年に全線が開業しています。
有楽町線延伸は、2022年3月に鉄道事業許可を得たのち、同年8月に都市計画素案の説明会、環境影響評価調査計画書が作成され、2023年6月に「都市計画案及び環境影響評価書案説明会」を実施。2024年6月に都市計画決定、環境影響評価書の縦覧が行われています。
事業許可から2年半をかけて、このような様々な手続きを進めて、ようやく工事に取り掛かれます。
しかし着工しても、すぐにトンネル掘削を始められるわけではありません。道路施設物や埋設物の移設など準備工事や、路面から掘り下げるためのくい打ち(連続壁の設置)など、本格的な建設工事を行うための準備が長い時間をかけて進められます。
有楽町線と南北線の延伸の開業目標はいずれも2030年代半ば、つまり工期は約10年です。地下鉄建設には長い時間がかかる印象ですが、実は駅部やシールドトンネルの建設に2~3年、レール、電気関係、建築工事に1年くらいしかかかりません。つまり、それまでの準備工事が工期の多くを占めているのです。
【了】
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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