東京メトロ「エリザベス線」が実現した4つの背景とは 東京の地下鉄“だからこそ”選ばれた大動脈の事情

東京メトロ、住友商事、Go Ahead Groupの3社で設立した合弁会社が、ロンドンの鉄道路線「エリザベス線」の運行に乗り出します。東京メトロが海外の鉄道運行を担うのは初めてですが、競合他社に勝って運行事業を受託するに至ったのには、4つの背景が考えられます。

東京メトロ「だからこそ」の強みも

 さらには安全性に実績がある東京メトロだからこそ、選ばれたのではないでしょうか。

 エリザベス線の発表資料には、今回の入札の結果、東京メトロを含む合弁会社による運行ならば「お客様とスタッフの安全に引き続き注力できる」と明記されています。東京メトロ発表資料の「安全・安定輸送の実現」という項目には、2022年度の鉄道運転事故件数は0件、予定時刻から5分以内の時間で発車できた定時運行率は99%という驚異的な数字が並んでいます。

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エリザベス線の列車(ロンドン交通局)。

 最後に、定時運行についてです。

 ヒースロー空港とロンドン市内北西部のターミナル駅パディントンの間は、主にエリザベス線とヒースロー・エクスプレスが運行されていますが、空港へのアクセスは特に予定通りに着くことが求められます。

 2023年度の定時運行率は、エリザベス線が87.4%(エリザベス線公式ページによる)、ヒースロー・エクスプレスが86.07%(ヒースロー・エクスプレス公式ページによる)と、遅延だらけの欧州の鉄道からしたら驚異的な成績でしのぎを削っています。競合他社に競り勝って、安全に定時に乗客を空港に運ぶためには、これまた、東京メトロの実績が欲しい事情がうかがえます。

 中国切り、多くの乗降客をさばく、安全性、定時運行の4つの理由から東京メトロに軍配が上がったと見られますが、さらに、2024年7月に政権を握った労働党は、鉄道の国有化を最優先課題のひとつに掲げて実現を進めています。

 英国の鉄道業界に再国有化の波が押し寄せている中、利便性が良く、業績も好調なエリザベス線は、今のところ国有化のリストには入っていない数少ない優良路線なのです。なんとしても国有化を避けたいエリザベス線の頼みの綱が、東京メトロなのではないでしょうか。

【了】

【写真と路線図】故エリザベス女王も臨席したエリザベス線の開通式典

Writer:

アーティストとして米CNN、英The Guardian、独Deutsche Welle、英BBC Radioなどで紹介・掲載される一方、鉄道ジャーナリストとして日本のみならず英国の鉄道雑誌にも執筆。欧州各国、特に英国の鉄道界に広い人脈を持つ。慶応義塾大学文学部卒業後、ロンドン大学SOAS修士号。

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