世界一の「船の墓場」を日本に作ります!? 造船所が異例の転身 国際的ブラック労働の解決だけじゃない“今っぽいビジネス”とは
日本郵船が日本で船舶の「解体」事業に乗り出します。世界の船が集まる途上国の「船の墓場」で起こっている労働・環境問題の解決につなげるものですが、もちろん“大きなビジネス”になる目算があってのことです。
国連も問題視「船の墓場」の労働・環境問題
日本で世界一の効率性を誇る船舶スクラップヤードが誕生するかもしれません。海運大手の日本郵船と産業廃棄物処理などを手掛けるオオノ開發(松山市)は「未来志向型グリーン船舶リサイクル」を掲げ、大型のドライドックを使用した船舶解体事業を2028年からスタートしようとしています。
両社は2024年11月25日、東京都内の日本郵船本社で報道関係者向けに説明会を実施。日本郵船バルク・エネルギー事業統轄グループの片山潤一新規事業開発チーム長は「大型重機を駆使し、世界最高となる年間20隻の解体能力の実現を目指していく」と意気込みます。
老朽化した船舶の多くはバングラデシュやインドといった労働コストが安い国に運ばれて解体されています。一方で労働災害や環境汚染が深刻化し、国際問題となっていました。
これらを解決するため、2013年には欧州籍船を対象としたEU-SRR(シップリサイクルに関するEU規則)が発効。2025年6月には船舶解体における労働安全確保と安全確保を目的としたシップリサイクル条約の発効が決まっており、安全で環境に配慮したスクラップヤードが求められています。
両社がシップリサイクル事業を行うのは、オオノ開發の知多事業所(愛知県知多市)です。かつてはIHIの愛知工場が置かれており、ドリルシップ(掘削船)やFPSO(浮体式石油生産・貯蔵設備)、LNG(液化天然ガス)船のタンクなどを手掛けていました。しかし、海洋構造物事業の採算悪化とオフショア市場の需要低迷などが影響し2018年に生産を停止しました。
工場の閉鎖後、オオノ開發は2021年にドックを含む敷地の一部を取得し、今年9月に日本郵船と船舶リサイクルの事業化に向けた共同検討を行うことで合意しました。
事業の鍵となるのは、解体の作業場となるドライドックです。その大きさは「長さ810m、幅92mと国内最大級。VLCC(大型原油タンカー)2隻を同時に収容することができる」と片山チーム長は説明します。
これに加え、敷地内には係留岸壁や内航岸壁、高効率焼却発電施設、PCB(ポリ塩化ビフェニル)やアスベストといった有害物質の分析を行う環境科学研究センターが置かれる予定です。
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