世界一の「船の墓場」を日本に作ります!? 造船所が異例の転身 国際的ブラック労働の解決だけじゃない“今っぽいビジネス”とは

「墓場」の先の“巨大ビジネス”とは?

 日本郵船とオオノ開發が船舶リサイクル事業を進める背景には、鉄鋼業界のニーズがあります。世界的な脱炭素化の流れが加速する中、コークスを原料とする「高炉」から、鉄スクラップを原料としCO2(二酸化炭素)の排出を抑えられる「電炉」へシフトする動きが高まっていることがあげられます。

 電炉で生産する鋼材の品質を維持するためには、良質な鉄スクラップが必要です。船舶に使用している厚板は船級協会が定めた基準をクリアしていることから一定程度の品質を見込める上、溶鋼からの除去が難しい不純物の含有量が少ないことから、非常に価値の高い鉄を作れるスクラップとして注目されています。

 日本郵船とオオノ開發は脱炭素化へ貢献するため、知多事業所で解体された船舶から回収した鉄スクラップを鉄鋼業界へ納入します。

「こういった鉄のスクラップが今後、日本で必要になってくる中で、もちろんインドやバングラデシュの船舶リサイクルヤードをアップデートするというやり方もある。しかし、海外から鉄スクラップを輸入してくるよりは、日本で産業廃棄物まで一貫処理するような新しい形を選択し、事業運営しながら鉄鋼会社さんの原料となる上質な鉄スクラップを供給することで、日本全体の脱炭素を推進できればと思っている」(片山チーム長)

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船舶リサイクルに伴う産業廃棄物の活用イメージ(画像:日本郵船)。

 シップリサイクル条約の発効後、日本で外航船を解体する場合には国土交通省、環境省、厚生労働省の3省から認証を得る必要があるため、日本郵船とオオノ開發は申請の準備を行っています。また、EU船籍船の解体も実現するため両社はEU-SRRについても申請する予定です。

 環境課題を背景に、大規模な船舶解体の専業ヤードが、かつて造船を担った地で動き出そうとしています。

【了】

【え…】これが「船の墓場」になる愛知の造船所です(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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