世界一の「船の墓場」を日本に作ります!? 造船所が異例の転身 国際的ブラック労働の解決だけじゃない“今っぽいビジネス”とは
“人海戦術”はNO! 世界最高能力の解体場へ
解体作業について、片山チーム長は次のように説明します。
「まず係留岸壁で船内にある油や有害物質を除去し、ドライドックに入った後、ビルジ(不要な汚水)や塗料カス、解体中に発生するさまざまな廃棄物はドック内で全て適切に管理することで、海や土壌への環境汚染ゼロを目指す」
焼却可能な産業廃棄物は、敷地内の施設で燃やすほか、焼却できない産業廃棄物はオオノ開發が管理する埋立地で処理するといいます。「これにより、我々2社で船舶解体から産業廃棄物処理までの一貫サービスができると考えている」(同)。
知多事業所では、人力による解体作業を最小限に抑え、陸上で使用されている重機を中心とした船舶解体を実施することが計画されています。このために現在、数十ミリある船の厚板を重機だけで切断できるアタッチメントが開発中です。さらに5G(第5世代移動通信システム)を通じた遠隔操作システムの導入も視野に入れています。
事業規模は約8万重量トン級のパナマックスバルカー想定で年間20隻の解体を実施。1隻当たり1万5000トンとして、年間約30万トン規模のスクラップの供給を見込みます。船舶の解体を人海戦術に頼っているバングラディッシュやインドなどでは、1つのヤードで作業できるのは年間3隻から5隻程度とされており、日本郵船とオオノ開發が計画しているスクラップヤードは世界最高の解体能力を持つことになるでしょう。
受け入れる船種はバルカーやタンカー、コンテナ船、LNG船などの船舶から、将来的な解体需要が見込まれるFPSOや洋上風力発電所などの大型海洋構造物まで多岐にわたる予定です。日本郵船に限らずいろいろな船主の船を解体する方針で、もちろん内航船も対象となります。
「商船だけで 20隻を埋めていくのはチャレンジングな目標だと思っている。国内の海洋構造物や、海外では解体できない海上自衛隊の艦船など、日本のドライドックできっちり解体できることが評価してもらえるものを全て念頭に置いている」(片山チーム長)
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