JR北海道が「散水列車」の運行を取りやめた理由

温度とは関係なく走る「散水列車」も

 JR北海道が「散水列車」の運転を取りやめた理由としてまず、線路が強化されたことが挙げられます。従来のレールは最高52℃までの対応でしたが、現在は57℃まで対応温度が高められています。

 もうひとつの理由は、散水の効果が一時的なことです。散水を行うと約5℃、レールの温度が低下しますが、60~90分程度しか効果がありません。だからといって大量に水をまくと路盤がゆるみ、線路を壊してしまう可能性があります。

 つまり「散水列車」の効果はそもそも一時的なものであり、抜本的なレールの温度上昇対策として線路の強化を行ったため、散水列車を走らせる必要がなくなった、というわけです。

 北海道の鉄道は多くの人にとって、なくてはならない存在です。こうした線路の強化に引き続き、より安全、快適になっていくよう大いに期待したいですね。

 ちなみに散水できる鉄道車両は北海道の反対側、路面電車の鹿児島市電でも走っています。しかしこちらは目的が別です。ヒートアイランド現象の緩和と景観向上を図る目的で線路に芝生を植えているため、その維持管理に散水が必要だからです。そのような線路を「緑化軌道」といいます。

 また鹿児島の「散水列車」にはもうひとつ、「らしい」理由があります。桜島の降灰対策です。散水して灰を除去するために運転されます。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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