路線バスの屋根にある「コブ」は地球と人間への優しさ

技術の進歩で「コブ」化

 もうひとつの「コブ」の中身は「バッテリー」です。トヨタ自動車「プリウス」に代表される環境に優しいハイブリッドカーの流れが、バスにも来ています。

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バッテリーを屋根上に搭載している日野自動車製のハイブリッドバス。

 「コブ」の中にはニッケル水素電池を搭載。減速時に生み出された電気エネルギーを、屋根上にある「コブ」に蓄えます。そして加速時は、その「コブ」に蓄えた電気エネルギーを使ってモーターを回転させることにより、ディーゼルエンジンを補助。燃費を向上させる仕組みです。

 こうした電気式ハイブリッドバスは1991年頃から日野自動車から「HIMR」という名称で市販されます。しかしその頃のバッテリー技術は、現在のように大容量化や小型化が実現されていないうえ、充電と放電を繰り返す過酷な環境化のため、劣化についても課題となっていました。

 そのため日野自動車の「HIMR」はバッテリー本体の重量や保守のしやすさを考えると、床下にバッテリーを搭載する必要がありました。ですがそれではやはり、低床化してバリアフリーに対応することができません。

 しかし2005年、日野自動車は「ブルーリボンシティ ハイブリッド」を開発。技術の進歩によってバッテリーの小型軽量化と保守の軽減を実現し、屋根上にバッテリーを搭載することが可能になり、ハイブリッドバスでも地球環境とバリアフリーの両立ができるようになりました。

 ちなみに現在、いすゞ自動車の「エルガハイブリッド」というハイブリッドバスがありますが、こちらはバッテリーが屋根上ではなく、運転席側の最後列など車内に設置されているため、パッと見の印象ではハイブリッドバスと気付かないかもしれません。

 日頃あまり気にしないバスの屋根。ふと気付いてみると、地球環境とバリアフリーに配慮した「優しさ」が載っていたんですね。科学技術の進歩で姿が刻々と変化してゆく路線バス。数年後にはさらにバッテリーも小型化されて、「昔は大きなコブが載ってるバスがあったよね」なんて会話が交わされるかもしれません。

 またかつて、減速時のエネルギーをオイルを充填したタンクに圧力として貯める「蓄圧式」のハイブリッドバスもありました。

【了】

Writer: 海老塚 土史木(バス交通文化愛好家)

幼少期にバスの方向幕へ興味を持ってから、バス部品収集、乗りバス、撮りバスなどに明け暮れる。鉄道模型収集や、鉄道・バス車両の第二の車生めぐりを絡めた旧道探索も趣味。鉄道模型雑誌の編集部でバス企画の編集を経験して以降、記事執筆やバス貸切企画、座談会などを通してバス趣味の楽しさを共有する活動を行っている。

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