改めて考えるリニア中央新幹線の建設目的

「二重化」するもうひとつの意味と「世界」への視線

 「日本の大動脈の二重化」は、もうひとつの意味があります。今年10月1日に50周年を迎えた東海道新幹線の経年劣化対策です。JR東海は列車を運休させず高架橋やトンネルといった設備の延命を実現する技術を開発し、現在、東海道新幹線で大規模改修工事を行っていますが、だからといって永遠に使い続けられるわけではありません。もし東海道新幹線の運行を止めて工事する必要が生じた場合、代わりになる路線がなければ日本の大動脈が止まってしまいます。

 ふたつ目は経済効果です。リニア沿線はもちろん、東京、大阪、名古屋の三大都市圏をより短い時間で結ぶことで日本の経済、社会活動が活性化するほか、超電導リニアに伴う様々な最先端技術の実現によって製造業も活性化。そうした技術は高性能材料、電力供給、環境、医療、宇宙開発など鉄道以外の分野への応用も考えられ、日本製造業の国際競争力強化といった波及効果も期待できるとしています。

 そして超電導リニアは19世紀に商用鉄道が誕生して以来2世紀ぶりに、日本独自の技術によってもたらされる鉄道システムのブレイクスルーであり、世界で高速鉄道の需要が伸びている現在、海外へ日本の鉄道技術を輸出していくにあたってビジネスチャンスの拡大が期待されるとしています。

 またリニア中央新幹線によって東海道新幹線の役割が変わるため、現在の状況では難しい「ひかり」「こだま」の増発や新駅の設置など、東海道新幹線の新たな活用可能性が生まれます。

 新幹線が開業する前、1962(昭和37)年から始まっている、国鉄によるリニアモーターカーの開発。それからおよそ半世紀を経て、いよいよ実現が見えてきました。ただそこには大阪への延伸や工事残土問題など懸念される要素も存在。今後の進展が注目されます。

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道ライター、イラストレーター。「鉄道」や「旅」に関する執筆活動や絵本の制作を行っているほか、鉄道車両のデザインにも携わる。子供の頃からの旅鉄&撮り鉄で、日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済み。完乗駅はJRが稚内で、私鉄が間藤。メインは「鉄道」だが、基本的に「乗りもの」好き。

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