JR九州に黒字路線はひとつだけ 「分け方」で変わる路線の命運

鹿児島本線の黒字化は簡単?

 鹿児島本線を黒字にする方法は、ある意味簡単でしょう。鹿児島本線を北九州・福岡大都市圏の門司港~鳥栖、久留米、荒尾間だけにしてしまえばよいのです。その場合「鹿児島本線」を名乗るのはどうか、という問題はありますが。

 言葉遊びに近い話ですけれども、実際にこうした路線の名前によって明暗が分かれたこともあります。

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久慈駅で発車を待つ、国鉄久慈線を引き継いだ三陸鉄道宮古行きの列車(2008年3月、恵 知仁撮影)。

 NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台になった岩手県の三陸鉄道。その久慈~普代間26.0kmはかつて、国鉄の久慈線でした。そしてこの久慈線は、青森県の八戸駅と岩手県の久慈駅を結ぶ国鉄八戸線を普代駅まで延長した形で、見かけ上は1本の路線ながら、久慈駅を境に八戸駅側は八戸線、普代駅側は久慈線という2路線に分かれた形になっていました。

 この久慈駅を境に異なっていた路線名が、明暗を分けました。八戸線区間は問題なかったのですが、久慈線区間は輸送量が少なく1981(昭和56)年、廃止対象にされてしまったのです。しかも仮に八戸~普代間のすべてが八戸線で、「久慈線」が存在しなければ、需要の多かった八戸線区間の影響で八戸~普代間の全線で廃止基準をクリアできる状況。つまり久慈~普代間を久慈線ではなく八戸線の延長にしておけば、廃止対象にならなかった可能性もありました。

 このように路線の収益状況は区間、分け方によって異なる形を見せるものなのです。ちなみに廃止対象にされた国鉄久慈線は1984(昭和59)年に、第3セクター鉄道の三陸鉄道へ引き継がれました。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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4件のコメント

  1. この記事の東海道本線の赤字額と久慈線の件は、宮脇俊三の「時刻表ひとり旅」に全く同じ内容が述べられています。

    • 上岡様ご指摘の通りです。宮脇氏の著作権侵害に当たると私は考えます。

  2. 誤:JR九州に黒字路線はひとつだけ
    正:JR九州の在来線に黒字路線はひとつだけ(九州新幹線は黒字)

  3. 「鹿児島本線」を名乗るのはどうか、と言っていますが、2004年に九州新幹線新八代〜鹿児島中央開業時に八代(熊本県)〜川内(鹿児島県)間が肥薩おれんじ鉄道になっているので、分断されているが、八代以北も「鹿児島本線」となっています。