アシアナ機事故は手動着陸の「滑走路28」 操縦ミスか

高度が極端に低かった162便

 損傷状況から分析すると、おそらく機体が少し左に傾いた状態で「計器着陸装置(ローカライザー・アンテナ)」に接触したと思われます。本来162便が滑走路の正常な位置に着地する、その数秒前の出来事です。

 メディア映像ではエンジンのカバーと思われる残骸が「ローカライザー」周辺に飛び散っているほか、エンジンに「ローカライザー」のものと思われる赤い部品が付着。メインギア(主車輪を含む降着装置)も破損した様子で、それで左右ブレーキのバランスを崩したため、滑走路から機体が逸脱して芝地帯に突っ込んだ可能性もあります。

 また滑走路の端に設置されている「ローカライザー」に接触したということは、滑走路へ進入する際に機体は、横方向にはずれていませんでしたが、垂直方向にずれていたと考えられます。

 本来の滑走路上の「接地点」へ着地するには、高さが約6mある「ローカライザー」の上空を、30~50mの高さで通過しなければいけません。しかし接触したとなると、その高度が極端に低かったことを意味します。

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事故を起こしたアシアナ航空A320型の同型機(2011年、大村基嘉撮影)。

 当時の空港は風が弱かったため、一時的に追い風を受けた可能性もあり、その場合は適正なコースを飛行するためエンジンのパワーを減らして速度を再調整するなど、操縦の難易度が上がっていた可能性もあります。またA320型機の着陸寸前の速度は約250km/hですが、実際には向かい風や追い風の影響を受けて、少なからず常に変化します。

 ただ、仮に乱気流(突風)や急激な視界の悪化など気象条件が引き金になったとしても、状況を瞬時に判断し、「着陸やり直し(ゴーアラウンド)」をするなど、適切に対処を行うのがパイロット。今回それがどうなっていたのか、問われることになるかもしれません。

【了】

Writer: 坪田敦史(航空ジャーナリスト)

航空ジャーナリスト。パイロットの資格を持つ。航空会社、空港、航空機などの記事執筆・写真撮影を20年以上続ける。『わかりやすい旅客機の基礎知識』(イカロス出版)、『ヘリコプターの最新知識』 (SBクリエイティブ)など著書多数。最近はボーイング787、LCC、オスプレイといった航空関連トピックで、テレビや新聞でもコメンテーターとして活躍中。

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コメント

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2件のコメント

  1. どうだかわかりません、って、機長が逃げてるんだから、機長の操作ミスでしょ?
    ミスってなかったら逃げる必要もない…。どうなってるの?

    • 平成28年11月に出た航空事故調査報告書に書かれております。

      一旦着陸の管制承認をもらったのちの急激の天候悪化により、進入限界高度まで降下しても滑走路が見えない(速やかに着陸復航するのが決まり)にもかかわらず そのまま着陸を続けたのが事故原因。副操縦士は「滑走路が見えない」と言い出す…機長は「ちょっと待て」と答える…繰り返す…広島空港手前が崖になっているという事を忘れているから、あっと気が付いたときまもう手遅れ。