経験だよりはNG 21世紀の航空整備
「一等航空整備士」とは違う「マイスター」の称号
では“職人”とは遠い世界に思えるJALの「マイスター制度」とは、いったい何なのでしょうか。
「“マイスター”こそ次の人間の模範であれ、規範であれと思っています」(小久保さん)
国家資格である「一等航空整備士」は、一度取得したら基本的に失効することがありません。しかしJALの「マイスター制度」は貰ったら終わりではなく、定期的に審査があるとのこと。その“名誉”は、努力によって維持せねばならないのです。
「マイスターになる、つまり自分が褒めらると嬉しいですよね。若い子を褒めて引き上げて、その嬉しさを広げていく。そうしてモチベーションが組織全体で高まっていき、お客さまへ繋がっていくと思います」(小久保さん)
JALに「マイスター制度」ができたのは、2010年11月頃といいます。同社が破綻した時期です。
「我々はチームで仕事をしています。またそれがやりがいでもあります」(小久保さん)
技量や経験を若い人たちに伝承していくという点で、JALの「マイスター制度」は冒頭に挙げた「ドイツで、徒弟制度による職人の最上位。親方。師匠」(小学館『デジタル大辞泉』)という「マイスター」の意味と同様の部分があります。しかしその方法は合理的でチームワークが重視され、いわゆる“マイスター”“職人の世界”とは大きく異なるものでした。逆に、これが“21世紀における技術伝承”“21世紀のマイスター”といえるのかもしれません。
【了】
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
コメント