路駐車両を利用可能 加速するクルマの公共交通化

自動運転が加速させるクルマの非所有物化

 次にアメリカは、ニューヨークのマンハッタンやサンフランシスコなど一部の地域を除き、公共交通機関が発達していません。

 その原因について「昔から地方行政に対して自動車産業界の圧力があった」と、まことしやかに言う人が大勢います。その真相を突き止めるのは難しいと思いますが、現実としてアメリカはクルマ社会になっています。

 そんなアメリカでも最近、クルマを所有しない、または所有するクルマの台数を減らす人たちが徐々に増えてきました。クルマの代わりに彼らが使うのが、「Uber」や「Lyft」といったカーシェアや相乗りサービスです。朝晩の通勤で渋滞のなかを走るのが苦痛だとか、お酒を飲んで帰りたいとか、都市周辺の郊外に住む人たちが利用します。

 これはアメリカでは、極めて大きな社会変化です。公共交通機関が少ない地域に、公共交通機関のような役目をするビジネスが定着しようとしているのですから。

 こうした世界各地でのトレンドを踏まえて研究開発が進んでいるのが、「グーグルカー」です。スマホで時間と場所を指定すると、ドライバーレスの自動運転車が利用者をピックアップ。予約時に目的地を設定していれば、そのまま自動運転が始まります。乗車してから音声認識やスマホ操作で目的地を指示したり、走行中に「ちょっとスーパーで買い物をしたくなった」と寄り道することも可能。そんな夢のような乗りものが、2020年前後には実用化される計画です。

 またグーグルも出資するシェアライドの世界最大手「Uber」が2015年2月、先進技術研究センターを開設。自動運転について開発を始めました。既存のカーシェアサービスの自動運転化を目指しているとみられます。

 日本でも、DeNAと自動運転関連のベンチャー企業ZMPが2015年5月、新しい企業「ロボットタクシー」を立ち上げました。

 近い将来、カーシェアと自動運転が連携し、バスや電車のような公共性を重視した乗りものへと変貌。クルマは所有するものから供給されるものになり、日常生活が大きく変わるかもしれません。

【了】

Writer: 桃田健史

世界各地で輸送機器、IT、環境などの取材を続けるジャーナリスト。近著に『アップル、グーグルが自動車産業を乗っとる日』(洋泉社)、『未来型乗り物「超小型モビリティ」で街が変わる』(交通新聞社)。

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